建築ビジュアライゼーションのフリーランスとして自分を売り込む方法 - Fabio Palvelli

建築ビジュアライゼーションのフリーランスとして自分を売り込む方法 - Fabio Palvelli

今や一般化したフリーランス

もうすでに皆さんもご存知のように、フリーランサーは増加の一途をたどっています。フリーランスや派遣労働の市場を指すギグエコノミーの市場はどんどん拡大し、その需要に対応するため、フリーランスがより一般的になっています。そして従来の雇用方法に疑問を持ち始める人も増えているのです。フリーランサーだけでなくそのお母さん、そしてそのお母さんが通っているカイロプラクターでさえ、会社勤めではなくフリーランサーになる時代です。フリーランサーが増えている理由を下にあげてみました。

  • 好きな恰好で働ける
  • 上下関係を気にすることがない
  • 柔軟性、自立性、自己実現性が高まる
  • 好きな仕事に集中して情熱を燃やせる
  • 通勤しなくていい
  • 会社内の人間関係や派閥、強制的な飲み会などの付き合い、気まずいエレベーター、毎週のスタッフミーティング、うわべだけのお祝いの数々、そんなものから解放されるのです。
オフィス内でこんな場面もよくありましたよね。

こういった理由は今更箇条書きにする必要もなかったかもしれません。こういう内容はよく記事や広告で目にします。時々役立つヒントもあるにはありますが、大体の記事はポジティブな結果に焦点を当てる傾向があり、ネガティブな視点や批判的な視点は紹介しません。

私もこれまでに、フリーランサーとしての不安感を安心させるためにいくつもそういう記事を読んきました。しかしそういった利点だけを紹介する記事は、不安感を減少させるためにはいいのですが、実質的な指針とするには有意義なものとは言えません。

そしてまたそういう記事は、フリーランサーとしてどうやって生計を立てるのかという実践的なことは紹介せず、オフィスで働くことがいかに大変かということを、読者に思い出させるだけのものが多いです。

フリーランスはもはや珍しいとか、近未来的な働き方ではなく、現代では一般的になっています。フリーランスの市場はより混雑してきており、私たちはその中の一般的な一人なのです。その上、テクノロジーによって自動化も進んでいるため、フリーランサーが仕事を探すことも難しくなってきているのです。

ギグエコノミーはもはや安全で快適な場所ではなく、世界中に同じようなサービスを提供する人がたくさんいて、それが過密で競争の激しい市場になっています。 そしてフリーランサーを探している企業は、最も安い料金で仕事を請け負ってくれるフリーランサー探す傾向にあります。

ギグエコノミーでは多くの仕事の機会がある一方で、フリーランサーの数だけ掲示板やプラットフォームが存在し、仕事をめぐってフリーランサーの間で大きな競争が起きています。もちろん、1 日にどれだけの仕事をするかはあなた次第ですし、誰のために働くかもあなた次第です。しかし現実的に言えば、お金を稼ぐ必要性から仕事の機会を断ることが難しいのも事実です。また、フリーランスが固定給や賃金に依存していないとはいえ、経済的に自活するためには一定の収入を得る必要があります。

こういったことから様々な疑問が湧いてくるわけです。

良い仕事はどこにあるのか?

そういうわけで今回、ウィーンで建築ビジュアライゼーションのデザイナーとして独立し、フリーランサーとしてのキャリアをスタートさせた Fabio Palvelli (ファビオ・パルベリ)に色々と質問してみました。ファビオがキャリア開始当時直面した問題は、現在の建築ビジュアライゼーションデザイナーの課題と同じように、より安いサービスを提供する他国からのアウトソーシング労働力により競争率が高いことです。 そして彼はアウトソーシングがどのように可能なのかをさらに知るため、D2カンファレンスを共同設立しました。に至りました。D2カンファレンスは、ArchVizのデザイナー、アーティスト、専門家が世界中から集まり、この分野の現在の問題や発展について話し合う年次イベントです。

現在、彼は Chaos Group と協力し、建築ビジュアライゼーションデザイナーのコンサルタントとして、顧客獲得、キャリア戦略、市場ポジショニングなどのトピックについてアドバイスしています。また、YouTubeチャンネルを主催し、建築ビジュアライゼーション業界で成功するための見識を動画で共有しています。彼はまた、Bogdan Sasuの指導のもと、ArchViz分野の第一人者とのインタビューをまとめた書籍「Great Talks About Photo Realism」を出版しました。ファビオは自分の知識やノウハウを共有することで、建築ビジュアライゼーション業界のアーティストを支援し、彼らが安定したポジションを築けるようにすることを目標としています。

画像提供:Quirky Berkeley

過去に、ガレージファームのYoutubeチャンネル、GarageFarm.Net Academyのライブ配信でファイビオにインタビューしたことがありました。その内容の中でファビオが語った、建築ビジュアライゼーションのビジネスに関する発見をこの記事では紹介します。 ただし、その内容はあなたが期待するものではないかもしれません。

品質だけを求められる場合であっても、高品質の作品だけで成功できるとは限らない

ファビオは、「同じことをできる人がたくさんいるので、差別化を図るためにはより低い価格を提供するしかないのが現状です。」と今日のこの業界の問題点について語りました。

これについては、私たち誰もがこの問題の原因に加担したと言えるかもしれません。建築ビジュアライゼーションのフリーランサーは、高品質のレンダリングを作成できるということが主なセールスポイントですが、では 他に何を売りこめばいいのでしょうか。他にアウトプットできるものはあるのでしょうか。

ファビオが数名の開発者と議論した際に、採用担当者たちはフリーランサーに無料でのサンプル作成や追加のレンダリングを依頼するなど、無料または非常に低い料金で仕事を依頼することに慣れていることを知りました。採用担当者は、フリーランサーは自分の仕事に誇りを持ち、新しい顧客を獲得したいと思っているので、適切な報酬を期待せずに追加の仕事やサンプルを喜んで提供すると考えているというのです。現在、フリーランサーは必ずしも最低賃金法に分類されないので、採用側は従来の従業員よりも低い料金を提示してくることもあり得ます。

多くのフリーランサーは、「自分の仕事は高品質であるが、クライアントのニーズや予算と必ずしも一致しない」という難しい立場にあります。それは仕事を確保し収入を得るために、フリーランサーはクライアントが購入可能なレベルまで価格を下げざるを得ないというのが原因です。これを書いている現時点でも、あらゆる業界でこういった価格の引き下げが広く継続的に行われており、個々のフリーランサーだけでなく、業界全体にとって悪い影響を及ぼしています。

このミームを使う時を待っていました。

ファビオによるとこれを防ぐには、自分自身を「高品質の画像制作のみを売りにするアーティスト」として売り込まないことです。 市場はまさにこういった高品質のみを売りにする人々で溢れています。 フリーランサーは質の高い画像を作ることだけに集中するのではなく、建築ビジュアライゼーションのデザインをフリーランサーとクライアントのコラボレーションによる創造的なプロセスとしてアプローチすべきです。つまり、最終的に作るものは、単なる高品質な画像ではなく、クライアントのストーリーやビジョンを反映したものにしたほうがいいでしょう。 さらに、フリーランサーは、単に高品質の画像を提供するだけでなく、クライアントの目標達成やブランド構築を支援するコンサルタントとして認知されることを目標にしてみましょう。クライアントは何を得たいのか、それを達成するにはどう手伝えるかを、一緒に考える姿勢が大切です。

テクノロジーは高速化していますが、私たちは違います

クライアントに真剣に受け止めてもらいたいなら、自分を機械のように扱うことを避け、仕事に費やした時間以上の価値を提供することに集中しましょう。フリーランサーの中には、自分の技術を磨くために費した時間と努力をクライアントが評価し、価値を認めてくれると思い込んでいる場合があります。 電話に出るたびにアレクサンダー・グラハム・ベルに感謝しないように、私たち人間は技術の進歩から恩恵を受ける一方で、その進歩の背後にある歴史や努力について考えることはあまりありません。

技術の進歩により、経験の浅い人でもツールやプロセスを使いやすくなっており、たとえばあなたの半分の経験しかない人々でも、リアルタイムテクノロジを使用してより良いレンダリングを作れるようになりました。 ファビオによると、フリーランサーの中には、技術をアップグレードすれば、同じ価格でより多くの作品を制作できると考えている人もいるかもしれませんが、これは危険な思い込みだそうです。「ビジュアライゼーションの価格を下げようとすることは有効な戦略ではなく、最終的には価格が下がり続け、競争に勝つために品質が犠牲になる”底辺への競争”につながる」と彼は言います。

建築ビジュアライゼーションを機械的な仕事として扱う態度は、フリーランサーにとって有害です。 クライアントが建築ビジュアライゼーションを純粋に技術的または機械的なプロセスとして見る場合、個々のフリーランサーのユニークなスキルや貢献を評価したり、価値付けたりしない可能性があります。 しかし、フリーランサーは個々の創造的な貢献や独自の視点である、「特異点」が重要です。

AIが私たちができないことを冷笑する未来がくるかもしれません

アップグレードや人工知能などのテクノロジーは、トレンドをよく知っておくためには必要です。しかしクリエイティブデザインの本当の価値は、単に目立つコンテンツを作成することだけではなく、アイデアを提供することにある、とファビオは言います。たとえば20年後に、海辺の家の建築ビジュアライゼーションがほしいクライアントがいたとします。そのクライアントは自分でAI のパラメーターを設定して、ほしいレンダリングをAIによって作ってしまうかもしれません。

ではその時、デザイナーは何ができるでしょうか?「海辺の家だけでなく、海を見下ろす崖の上の窓辺でワインを飲むカップルの画像を生成してほしい」とAIに依頼し、 ストーリー性を加えることができます。つまり、ユニークなクリエイティブ・アイデアやストーリー性を提供することで、機械や人工知能とは異なる芸術的価値をクライアントに提示する、という方法もあるのです。

ただの道具にならないようにするにはどうすればよいでしょうか

次に紹介することは、今までに述べたことすべてに反するように聞こえるかもしれません。

Real special

オフィスでの仕事に就くべきでしょう。

冗談です。 少なくとも、自分が好きで尊敬する会社のためにフリーランスになることをお勧めします。

フリーランスになろうと思ったきっかけを思い出してください。その理由が「なんとなく」や「お金のため」であれば、フリーランサーを再考することをお勧めします。建築ビジュアライゼーションで長く働きたいのであれば、成功は進化のプロセスの一つに過ぎないということを知っておく必要があります。この業界には手っ取り早く儲けようとする人がたくさんいて、それが仕事の質や業界全体の評判を下げている原因にもなっています。一方、フリーランスとして成功したアーティストは、スタジオで何年も働いた経験を持っていることが多いです。Blenderを2年使用したからといって、フリーランスとしてやっていけると期待してはいけません。成功するために必要なスキルと評判を身につけるには時間がかかるのです。「ギグ エコノミーが成長している」と有名な雑誌の記事で言われていても、簡単に成功できるとは限りません。短期間で利益を求めるのではなく、長期的な視野で仕事に取り組み、高品質のサービスを提供することにコミットすることが大事だとファビオは言います。

会社で働くと収入は減るかもしれませんが、顧客管理の心配はなくなります。また、顧客対応はそれ自体がスキルであり、一部のフリーランサーにとっては困難なこともあるのです。企業で働くことで、フリーランサーはクライアント管理の経験を積み、サポートされた環境の中でこのスキルを身につけることができます。

さらに、自分よりも優れたプロフェッショナルたちに囲まれて経験を積むことができます。自分よりレベルの高い人達から学び、作品を向上させ、意見をもらうことでさらに素晴らしい 建築ビジュアライゼーションの ポートフォリオを作成できます。

そのポートフォリオを公開して、さらに良いクライアントや人々と縁ができるかもしれません。そう語るファビオの意見が正しいかどうかは、実際にあなたが体験して知ることになるでしょう。

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リソースを活用して質の高い仕事を作成する方法: (https://garagefarm.net/jp-blog/10-tips-for-a-faster-archviz-workflow-and-better-renders)

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