建築ビジュアライゼーションのポートフォリオを作成するための原則

建築ビジュアライゼーションのポートフォリオを作成するための原則

プロを目指す

以前紹介した「AIと建築ビジュアライゼーション:テクノロジーに仕事を奪われず、むしろ活用していくには」の記事では、建築ビジュアライゼーションは芸術の一つだという結論で締めくくりました(芸術は一般的にお金を稼ぐこととは関係ないものだとはわかっています)。しかし、ポートフォリオをデザインするというトピックに入る前に、これについて少し掘り下げたいと思います。

建築業界にテクノロジーが欠かせません。この業界が好調なのは、技術の進歩が目覚ましく、回り道をすることが少ないからです。しかし、その進歩の裏側には、「今、市場で人気のあるものが、後でありふれたものになってしまう」という脅威があります。忠実度の高いレンダリング画像に価値がなくなるということではなく、初期の魅力が薄れてしまうということなのです。

建築ビジュアライゼーションをアートとして認識することで、この業種につきものの悩みや葛藤が自動的になくなるわけではありません。しかし、芸術の一つと認識することで、長期の仕事に対する心構えができます。過酷な夜間労働、絶え間ない自信喪失、過剰な量のコーヒー...そういったものとの付き合い方です。そして、仕事の本質をよりよく理解し、見通すことができます。ハードウェアやソフトウェアのアップグレードなど、これらのツールは仕事を改善することはできても、車が馬に取って代わったのとは違い、創造的なプロセスを完全に変えることはできないのです。

この業界でよく耳にする「フォトリアリズムを達成する→お金になる」は成功を収めるためのプロセスは単純明快に説明していて、クリックベイトや記事、YouTubeのチュートリアルなどの形で宣伝されています。

イカロスがどこだかわかりますか?ピーテル・ブリューゲルによる作品

歴史の中で媒体は変わっても、芸術の落とし穴と成功方法は変わりません。粘り強さ、恐れ、謙虚さといったものはアーティストにとって普遍的な経験であり、これらの資質は最終的には技術的なスキルよりも重要です。現役のアーティストたちも指摘するように、技術的なスキルはもちろんのこと、様々な視覚的要素を統一することに焦点を当てた、アートへの精神的アプローチが成功への秘訣です。

良い雇用主がであれば、技術に純粋な関心を持ち、成功への意欲を持つ人材を求めています。CGは技術であり、商売ではありません。この分野で成功するためには、技術的なスキルだけでは不十分であり、表現力、創造力、スタイル、気質、そして自己研鑽が必要です。業界のトレンドに左右されない質の高い作品を生み出す職人であることを表現することも大切です。

では、これらのことがポートフォリオとどのような関係があるのでしょうか?

ベストタイムは、10年前だった

がっかりですよね。だからといって、10年前に3D作品を始めるべきだったという意味ではなく、できるだけ早くポートフォリオを作り始めるべきだ、ということが言いたいのです。

バーデミック(2010年) from Giphy

しかし、3Dを始めた人は、ゼロから自分のスキルやポートフォリオを作り上げなければならないと考えているのではないでしょうか。10年前にもしあなたがポートフォリオを作っていたら、初めて作ったいくつかの図面やモデルだけで構成されていたかもしれません。つまり、小さく始めることは普通であり、誰しもがそういった小さな地点から開始するのです。

ポートフォリオは、自分の成長や芸術的スタイルを測る尺度です。自分の作品を批判的に吟味し、心に響く作品を選び、何が素晴らしいのか、何が不足しているのかを分析できます。そしてそれは、あなたの成長を記録するものです。だから、もしあなたがまだポートフォリオを作成していないのなら、自分の作品の数々をじっくりと振り返ってみてください。批判的な自分の心の声を抑え、ベストなものだけでなく、直感的に共感できるものを選び出すのです。選んだ作品について、何が自分にとって素晴らしいのか自問自答してください。そして、「自分には何が足りないのか」なども考えてみてください。自分の目指すものは何か、自分のアートを "動かす "ものは何か、考えてみるのです。最初のベストタイミングは10年前だったかもしれませんが、次のベストタイミングは今です。

プラットフォームで存在感を出す、そして批評を受け入れる

Facebook、Instagram、LinkedIn、Artstation、Ronenbekerman、Behanceなど、自分の作品を紹介できるソーシャルメディアプラットフォームはたくさんあります。自分が何を求めているのか、どんなスタイルを目指しているのか、つまりポートフォリオで何を達成したいのかがわかっていれば、他の人からの批判も正しい方向への後押しになるでしょう。批判を受けることは悪いことではありません。むしろ自分の技術を向上させるためのプロセスの一部であり、その技術に愛と理解を持つ批評家からフィードバックをもらえたならそれはありがたいことです。

フライト・オブ・ザ・コンコード S1E03「Mugged」 by Giphy

逆に、他の人の作品に感想やフィードバックを与えるのもいい経験です。フォーラムやオンラインプラットフォームで他の人の作品にフィードバックを与えることで、他の人々にも同じように成長の機会を提供でき、自分の作品を見直すためのきっかけにもなります。さらに、依頼したい人などがCGフォーラムをチェックしていた場合、仕事のチャンスにつながる可能性もあります。

また、CGのコンペティションに参加することでも利点があります。 コンペティションは、自分のスキルを向上させ、自分にプレッシャーを与えることで自分の殻を破り、新たなモチベーションを与えてくれるでしょう。コンペティションに勝つことも良いですが、それより大事なのは挑戦することです。 また、締め切りというプレッシャーが創造性を刺激し、制作する作品に目的意識を持った選択をもたらします。

自分を表現する一番の方法とは

Image creds to Nick Taylor of Golden Mean Calipers

ポートフォリオでは、自分が何者であるかをできるだけ簡潔に伝える必要があります。そしてそれは専門分野や仕事の種類など、あなたが自分をどのように認識しているかによって異なります。また、ポートフォリオを見る側も、何ページもの作品に目を通す時間はないでしょうし、明確で簡潔な方法で自分をアピールすることが重要です。

大抵の場合、ポートフォリオには5つ以上の作品があれば良いでしょう。もし建築ビジュアライゼーションの仕事をしたいのであれば、建築ビジュアライゼーションの作品だけをポートフォリオに掲載しましょう。最初に一番良い作品を見せ、最後に2番目に良い作品を見せます。その間の作品は好きなように構成してもいいですが、一貫性が重要です。一番悪いと思う作品は、作品のクオリティがそれ以下にはならないということを示すものにします。同じシーンの異なるショットを載せたい場合は、それぞれにスキル上の異なる面があることを提示しましょう。それぞれの作品は、あなたが出せる最高の解像度とレンダリング品質で、それぞれが独立した存在であるべきです。

ビジュアライゼーション作品を購入したいだけのクライアントの場合は、最終的な出力のみを掲載したポートフォリオを見せるようにしましょう。

一方、例えば社内にCGアーティストがいる建築事務所にポートフォリオを提出する場合は、ワークフローを見せることで仕事に対する姿勢をアピールすることができます。専門的な基準であなたのスキルを評価してくれるでしょうから、クレイ スカルプトやレンダリングなど、クリエイティブなプロセスを紹介することで、能力を証明することができるかもしれません。 しかし、テンプレートやチュートリアルに基づいて作成した作品は追加しないでください。つまり、ポートフォリオは、その人独自のスキルや能力を示すオリジナルの作品で構成されるべきです。また、あまりに多くの作品を掲載すると、ポートフォリオのインパクトが薄れてしまう可能性があります。ポートフォリオに何を含めるか迷ったら、次のような質問を自分にしてみてください。

  • これらの要素や特徴は自分のメッセージを伝えるのに役立っているか? 自分のスキルセットを忠実に描写しているか?
  • 私がどんなことができるかを採用担当者に適切に伝えられているか?
  • 弱点や限界を隠さず、正直になれているか?
  • 仕事を最初から最後までやり遂げれることを示せているか?

そして何より、あなたが働きたい会社をリサーチをしてください。自分が成長できる仕事に就くべきですが、企業によって環境や条件が非常に特殊です。その会社がどのようなソフトウェアを使用しているか、どのようなことで知られているかなど、その会社について調べ、必要ならそのソフトを勉強しましょう。その会社は業界においてどんなことで知られていますか?何を必要としているでしょうか?あなたはその会社に何を提供できますか?

目標を決め、それを目指しましょう。まずはそれを知ることです。フリーランサーやジェネラリストは特に重要なことです。どのような仕事を得たいかを伝えましょう。

練習、そして練習

練習や上達にはさまざまな方法があり、自分の仕事を紹介し、存在感を示すために利用できるプラットフォームも多数あります。建築ビジュアライゼーションのレンダーファームを使用して練習することも可能です。すべてのアセットをゼロから作る必要はなく、3DBeeのようなリソースを使うのもいいでしょう。また例えば、ガウディの「カサ・バトリョ」のような有名な作品に自分なりのアレンジを加えたりするなど、既存の歴史的建造物を使用するのもいいでしょう。また、シーンを最初から最後まで作り上げるウォークスルーをアップロードすることで、自分自身に挑戦することもできます。

ポートフォリオを作るには時間がかかります。でも、CGの存在を知るずっと以前の子供の頃、初めて落書きをしたときから、あなたはずっと芸術能力を高めてきたはずです。テクニックとスキルは、あなたのビジョンを正確に表現するためにあるのです。そしかし、その根底には、形、光の反射、形や色の構成、雰囲気など、アートの基本を理解していることが重要です。

コンピュータ・グラフィックスは確かに未来的かもしれませんが、その道を切り開いたのは伝統的な手法です。つまり、紙とペン、もしくはアクリル絵の具や油絵などの伝統的な芸術的媒体は依然として価値と重要性を持っています。アートやデザインにおける伝統的な技術と新しい技術の組み合わせが創造的な目標を達成するために効果的なのです。

今回も記事を読んでいただき、ありがとうございました。もしよければあなたのポートフォリオを見せてください。

参考文献:

さらに他の情報にも興味があれば、下記のプラットフォームから様々な情報をご覧いただけます。

YT: https://youtu.be/4i_QteWrea0

iTunes: https://podcasts.apple.com/pl/podcast/cg-talks/id1494148854

Stitcher: https://www.stitcher.com/podcast/cg-talks

RadioPublic: https://radiopublic.com/cg-talks-GMr9qQ

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