AIと建築ビジュアライゼーション:テクノロジーに仕事を奪われず、むしろ活用していくには

AIと建築ビジュアライゼーション:テクノロジーに仕事を奪われず、むしろ活用していくには

「革命」という言葉は、現代では違う意味で使われるようになりました。昔は、銃を持って「革命」を叫べば独房に入れられたような時代もあるほど、この言葉は公共の場で使うことも憚られているような意味合いがありました。

しかし今では、最新の車や靴など様々な広告にこの言葉が使われています。 しかし、これはただのマーケティング戦略なのでしょうか、それとも何か隠された重大な意味があるのでしょうか。誇大広告は CG 業界にもあります。おもちゃ、ガジェット、そして今後さらに勢力を増すであろうサービスなどにおいて、3D の新時代の到来が告げられています。特に今注目されている最新のものといえば、仮想現実と AI の採用です。

私たちはこれまでたくさんの映画を見てきました。 しかし、この記事を書いている時点では、ターミネーターはまだ現れておらず、頭上を飛んでいる車もありません。 それでも、コンピューター化が将来の雇用とスキルの低下にもたらす脅威を無視することはできません。

Creds to Kurzgesagt, check out more of their bite-sized nihilism here

これらの技術開発やプロモーションにおいて「革命」や「パラダイム シフト」(その時代に当然と考えられていた物の見方や考え方が劇的に変化すること)という言葉が頻繁に飛び交っていますが、3D 業界にはどの程度影響しているのでしょうか?

下記に、GarageFarm のCG専門家である Marco、DJ、Tomas が 建築ビジュアライゼーションについて対談した内容をまとめました。

  • どういった作業が AI によってまずは自動化されるのか
  • VR テクノロジーはもうすぐ変革をもたらすのか
  • 現在の建築ビジュアライゼーションの デザイナーは、飽和状態にある市場でどうやって成長を続け、生き残っていける

自動化と雇用について

まず、メインの議題が何かをよく考えてみましょう。 上のビデオを見てみると、将来的には全ての仕事の一部は置き換えられていくだろうと言っています。 私たちがアウトプットしてきた作業が、機械学習によりアルゴリズムのデータとして抽出され、よりスマートに、素早く検出、パターン化され、最終的には私たちを打ち負かすでしょう。スキルが必要な仕事や認知度が関係する仕事でさえ影響を受けやすくなるかもしれません。 私たちが行ってきた作業は、マシンが読み取れるようになり、小さなタスクに分解され情報になります。

でもなぜそれがいけないのでしょうか? 機械は睡眠も食事も必要としないし、労働組合も結成しません。この議論のもう一方の側面である、生産性の向上が何を可能にするかを考えてみましょう。政策や規制が厳しいものでなければ、よりスムーズなワークフローが新しいサービスや、より良く充実した仕事を安定したペースで提供できるでしょう。 この流れは新しいものではなく、例えば現在でもYoutube のチュートリアル動画などを通じて、ビジネスに活用するための知識や技術を学んだりできます。 そしてそのような流れから、多くの人が建築ビジュアライゼーションにもBlender を使うようになってきているのです。

ザ・シンプソンズ S23E17の「ゼム・ロボット」
ザ・シンプソンズ S23E17の「ゼム・ロボット」

この変化はすでに職場でも感じているでしょう。 生産性を向上することにより、さまざまな種類の仕事を得れるようになってきました。 かつて小さなアートスタジオの建築デザイナーだった Tomasは、その会社で突然 3Dのタスクを割り当てられたのがきっかけで、その後建築ビジュアライゼーションの会社に入社しました。 一方、DJ はインテリアデザインの修士号を取得し、3D のノウハウを活用してこの業界に入りました。 彼らにとって、時間とリソースが必要な建築ビジュアライゼーションは、標準的なワークフローや幅広いフリーランスの機会を得るためにはボトルネックでした。

大抵の場合、3Dの仕事は外部委託できますが、建築ビジュアライゼーションは企業やアーティスト自身の重要なセールスポイントになります。 3Dは平面の設計図よりも優れているだけでなく、忠実度の高いレンダリング、詳細なライティング、テクスチャなど、クライアントを惹きつける魅力も多くあります。 合わせて、クライアントが自分のパイプラインに応じて、フリーランサーにフロアのレイアウト、3Dアセット、または漠然とした指示を期限内に提供できます。

3D 建築レンダリングは何十年も前から存在していますが、業界が急成長したのはつい最近のことです。 その背後のマーケティングは、それほど寛容ではありませんでした。 「革新的な」製品やサービス (VR や AR など) ごとに、クライアントは高い期待を持ちます。しかし一般的に、クライアントは建築ビジュアライゼーションのデザイナーにコストについて漠然とした感じでアプローチしてきます。 最初から価格設定を考慮に入れるかどうかは、フリーランサー次第です。

自動化の話に戻りますが、需要が最も高いのは、顧客にとって、より効率的なワークフローを作成することであり、それは(まだ) ロボットに取って代わられることはありません。 これは、BlenderCon 2018 で Andrew Price も予測しており、すぐに置き換えられるような仕事は、誰もやりたくないような内容(単調で退屈な仕事など)のものです 。

3D レンダリングよりもバーチャルリアリティ?

より賢く働くことが重要です。VR が古い技術に取って代わり、変革をもたらすというのはまた別の話です。 活版印刷はさておき、カメラが絵画に取って代わったわけではありません。 プリントが手動の活版印刷に取って代わったように、VR は今後商業市場を支配していくでしょうか?その可能性は高いです。 そしてそれらの美学の方針や目指すものは同じでしょうか?これは違うでしょう。

Art by Scott Johnson
Art by Scott Johnson

バーチャル リアリティを大きく掲げているオンラインのリソースが多数あります。 デジタルで作られた空間を歩き、そこを体験できるのは、驚異的なことです。 アーティストからすれば、クライアントにより早くプレビューを提示でき、無駄なやり取りや誤解を減らすことができるので、絵コンテなどを大幅に改善できます。 標準化されれば、建設業界でも作業がが促進されるでしょう。 プロジェクトにおいて何をすべきか、どこにワイヤーを敷くべきかを正確に把握でき、リスクを最小限に抑えることができます。

ただし、すべては VR がどのようにアピールしていくかにかかっています。 そのセールスポイントは、ユーザーの没入型体験です。遊びであろうと仕事であろうと、ハードウェアを統合するには価格がまだ高すぎます。フレーム レート、視線追跡、モーション トラッキング、不快感を与えない 3次元映像の レンダリングなど、まだまだ改善していく必要があります。

ワークフローの合理化こそが、まずはVR への道を開くことになるかもしれません。 Twinmotion のようなゲーム エンジンを使用したリアルタイム テクノロジは、VR が必要とする没入型の体験を可能にし、物事全体を簡素化します。 このテクノロジーに関心があるMarcoの意見としては、「反射と無機的な拡散鏡面反射光沢動作のみに依存しているアセットは、うまく機能しています。トリプル Aクラスの ゲームだけでも、リアルタイム技術がフォトリアリズムの実現にどれほど近づいているかがわかります。」と、語っています。

なんにせよ、すべてにおいて改善が求められています。 クラシック グローバル イルミネーションにもまだ改良が加えられています。今後はリアルタイムへ切り替えられていくでしょうし、現時点では予算に余裕のある大企業はすでに移行しています。 しかしトーマスによると、現在の建築ビジュアライゼーションの業界のほとんどの作業は、依然として標準の 3D レンダリングを必要としています。提供されるハードウェア、ソフトウェア、およびサービスの価格が下がるまでは、おそらく今後もまだ必要でしょう。

建築ビジュアライゼーションは芸術です

Lumion 10 のような現在主流のソフトウェアは、ワークフローをより簡単にし、そしてほぼ誰でも作業できるようにしてくれます。 それがまさに、自動化が現在私たちに与えている影響の一つです。建築ビジュアライゼーションが、VRでのアセットのスカルプティングやドラッグ アンドドロップ、またはさまざまなテクスチャやテンプレートの自動生成と同じくらい簡単で直感的なものになる時が来るでしょう。 しかし、VR が普及するのを待つだけだとか、技術の発展が 3D レンダリングの ワークフローを良くしていくの待つだけではいけません。

IGNのポスターの一部
IGNのポスターの一部

現在の 3D アートについては、様々な議論がされています。建築業界の最前線と現在を取り上げた短編映画、Beauty and the Bit の Landmark をご覧ください。 他には、Sony の Spiderman: Into the Spider-Verse も参考に見てみるのも良いでしょう。3D映画はかつて、観客を魅了することに関して、フォトリアリズムにそこまで依存していませんでした。

3D 業界のすべての業種で言えることですが、最新のテクノロジーは重要なツールです。 ソフトウェアの進歩のおかげで、今でははるかに多くの時間を節約できるようになったと、Marco、DJ、Tomas もこれに同意しています。これは、建築ビジュアライゼーションの仕事をさらに拡大できる可能性があることを意味し、さらに以前は時間をかけられなかったシーン構成、ムード、カラー グレーディングなどのクリエイティブな側面に集中することもできます。

そして、建築ビジュアライゼーション業界で頭角を現すには、自分のスタイルを開発することです。 しかしもちろんクライアントによって臨機応変に対応することも必要です。結局のところ、トレンドは天気のように変わりやすく、クライアントは常に明確なビジョンを持っているとは限りません。 建築ビジュアライゼーションのデザイナーは、適切なセンスでそれを表現できることが、今後ますます少なくなる可能性があります。 場合によっては、クライアントが望んでいるのは精巧で写真のようにリアルな作品より、簡単でラフなスケッチの場合もあり得ます。

しかし、そもそも建築ビジュアライゼーションでアーティスティックなスタイルをどのように開発すればよいのでしょうか?

DJ、Marco、Tomas は次のように言います。

  • プロジェクトやクライアントを追いかけるという考え方をやめる。
  • 写真、イラスト制作、絵画制作などさまざまな芸術形式を学ぶ。
  • 様々なスタイルを構築する。それにより柔軟に最新のツールを使用でき、最大限に活用できるようになる。
  • 実験できて自分が楽しめるクリエイティブなプロジェクトに携わってみる。
  • CGのコミュニティに積極的に参加し、他の人から学ぶ。 知識には以前よりもはるかにアクセスしやすくなっている。

もっと詳しく知りたい方は、建築ビジュアライゼーションに関するディスカッションで、さらに様々な意見を知ることができます。このようなトピックにご興味のある方は、ポッドキャストもチェックしてみてください。

YT: https://youtu.be/Yv48b7Rp8WY

iTunes: https://podcasts.apple.com/pl/podcast/cg-talks/id1494148854

Stitcher: https://www.stitcher.com/podcast/cg-talks

RadioPublic: https://radiopublic.com/cg-talks-GMr9qQ

ここまで読んでくださってありがとうございます。 今の時代だからこそ、この歌を送ります。

The Buggles’ “Video Killed The Radio Star” (1979)

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