【インタビュー】Blenderを使用して音楽業界の VFX の可能性を広げている涌井嶺さん

【インタビュー】Blenderを使用して音楽業界の VFX の可能性を広げている涌井嶺さん

今回は、涌井嶺さんの作業内容と、彼がどのようにBlender、Cyclesを使用して日本および K-pop ミュージック業界でヴィジュアルエフェクトに取り組んでいるか、そして私たちGarageFarm のクラウドレンダリングの使い心地についてもお聞きしました。涌井さんは、VFX アーティスト、ビデオ ディレクター、さらにはミュージシャンでもあり、高品質の 3Dを主導としたビデオ プロダクションに情熱を注いでいます。 彼が立ち上げた映像チームの”VeAble”とともに、涌井さんは実写プロダクションとコンピューター グラフィックスを合わせて素晴らしいビジュアルイメージを作成しています。涌井さんのようにGarageFarmのblenderレンダー ファームをお試しになりたい方は、50ドル分のレンダリングクレジットを進呈していますので、是非お試しください。

音楽を通してVeAbleを構築していく

涌井さんは、ビデオプロデューサーおよびアーティストとして約 7 年前から映像制作を行ってきました。最初は、彼自身が所属するバンドのミュージックビデオの作成がきっかけで、その後2018年に他のアーティストのビデオプロデュースをすることで映像の世界に本格的に足を踏み入れることになりました。 

ずっと真夜中でいいのに。 - 猫リセット (3DCG/Compositeを担当)
ずっと真夜中でいいのに。 - 猫リセット (3DCG/Compositeを担当)

「2018年頃から、他のアーティストのミュージックビデオを制作するようになりました。その後2019年末頃、自分のバンドのミュージックビデオに3DCGを使おうと思い、Blenderを使い始めたのがCG制作・VFXの世界に足を踏み入れたきっかけです。」

それ以来、涌井さんはミュージック ビデオ プロデューサーとして、プロジェクトによっては他のアーティストとコラボレーションをし、キャラクターアニメーション、背景制作、さらにはトゥーンシェーダーエフェクトなど、実写映像と 3D ビジュアル要素を織り交ぜるプロジェクトに特化してきました。 最近では涌井さんは、VFX-JAPAN Award 2022 のプロモーション ビデオ部門で、自身のバンド THE SIXTH LIE の「Everything Lost」という作品で優秀賞を受賞しました。

「VFXアーティスト・映像ディレクターとして活動しています。実写とCGを合成する技術(実写合成)を得意としており、グリーンバックを使ったミュージックビデオやCMを多く制作しています。K-POPのMVに携わることが目標で、連続的に世界がトランジションしていくような映像に惹かれ、K-POPのミュージックビデオの制作規模をVFXの力で実現することを目標とした映像チーム”VeAble"(ヴィエイブル)を社内に立ち上げました。プロジェクトによっては、アニメーターやイラストレーターとコラボして、トゥーン スタイルのシェーダーを使用して 3D で背景を作成することもあります。」

涌井さんは現在、自身のビデオ チームである VeAble と協力して、ビジュアル エフェクトをミュージック ビデオ制作パイプラインのメインとすることで、ミュージック ビデオ制作の規模と範囲を拡大しています。 VeAbleとは、”Visual effects + Able”、つまり視覚効果 + 可能を意味し、グループのユニークなスキルセットを表しています。

佐藤ノア - 「LADYBUG」
佐藤ノア - 「LADYBUG」

「VFXの力でK-POPのミュージックビデオ制作を拡大することを目標に、映像チーム「VeAble」は制作を行っています。まだ数名規模のチームですが、美術セットや背景シチュエーション数に上限の無い映像をディレクションする活動を行っています。」

Blenderでのミュージックビデオ制作とガレージファームに活用

涌井さんは、作品のすべての 3D 要素に Blender と Blender のレイトレース レンダラーのCycles を使用し、合成には After Effects を使用しています。 今回ご紹介する涌井さんが取り組んだプロジェクトは、佐藤ノアのミュージックビデオ 「LADYBUG」 です。 ミュージックビデオは、クラシックポップスタイルで、カラフルなバーチャル世界を映像に組み合わせています。

今回涌井さんには、このプロジェクトで初めて GarageFarm のレンダー ファーム サービスを使用していただきました。 Blender の renderBeamer プラグインを使用して、合計 343 フレームの4 つのメインのビジュアルシーケンスをレンダリングしていただいています。 涌井さんによると、レンダリングのプロセスはスムーズで、 外部ファイルからのモデル、マテリアル、シーンのリンクなどの一般的な問題もなかったとおしゃっていただきました。

「最初は説明を読みながらセットアップするのに不安がありましたが、Blenderアドオンからの連携がスムーズで、一度設定してしまえば全く問題なくレンダリングを進めることができました。レンダリングを回しながら他の作業もできるので、GPUが手元に1つしかなくても無駄な待ち時間が発生せず効率的でした。」

「また、映像制作案件でのレンダリングを自分のPCで行う場合、深夜や空き時間にレンダリングすることが多く、工数計算がしづらいという面があったのですが、明確にレンダリングにかかったコストが根拠付きで算出できるというのはビジネス的に助かります。」

Blender の Cycles レンダリング エンジンのようなレイトレース レンダラーの一般的な欠点は、ガラスなどの反射率の高いサーフェスをレンダリングするためには高い計算能力が必要になることです。 涌井さんによると、レンダリング ファーム サービスを使用することで、レンダリング品質を犠牲にすることなく時間を短縮できるとおっしゃっていただいています。

「BlenderのCyclesレンダラはまだまだガラスの質感や反射・屈折などの表現に弱く、適切に表現するにはサンプル数をかなり多くしないといけない場合がありました。しかし今回試してみて、ローカルでレンダリングするのに比べかなりサンプル数を大きくしても、圧倒的に短い時間でレンダリング出来ることがわかったので、時間短縮や効率の面だけでなく最終的な作品のクオリティアップにもつながりました。」

ウルトラリアリスティックなCGで音楽を進化させる

リアルタイム レンダリングに関わる最近の多くのトレンドやメタバースなどにもかかわらず、涌井さんは、リアリスティックな 3D レンダリングの分野でやるべきことがあると考えています。 涌井さんがこれまで音楽業界で行ってきた制作は、業界が量よりも質に依然として重点をおいていることをを示しています。 ディープ ラーニング、AI、写真測量法などの新しいテクノロジは、リアリズムを新しいレベルに引き上げることを望んでいます。

佐藤ノア - 「LADYBUG」
佐藤ノア - 「LADYBUG」

「リアルで空気感や肌触り、匂いを感じるようなCGに惹かれるので、リアルタイムCGやメタバースなどとはまた違った、リアルさを究極まで追い求めたCGコンテンツが充実して欲しいと思っています。 実写合成において、人物を背景のCGと馴染ませるために、なるべく撮影時にライティングを合わせるのですが、どうしても実世界のライティングと3DCGのライティングが完全にマッチすることはありません。これを解決していけそうな技術に興味があります。」

これに加えて、彼はBlenderのような様々なアーティストの可能性を開く、オープンソースの次世代制作ツールの進化に注目し続けています。

「Blenderをはじめとするオープンソースのプログラムは、CGを個人ベースでの技術に変えていくと思います。」

涌井嶺さんとVeAbleは、K-popの世界でさらに制作範囲を拡大し、韓国のミュージック ビデオから自分たちの作品を向上させる術を学んでいきたいと考えています。

佐藤ノア - 「LADYBUG」
佐藤ノア - 「LADYBUG」

「日本のクリエイティブチームとして、K-POPアーティストのMVに関わることが目標です。韓国での撮影現場の様子や制作、企画コンテなどを見て勉強してみたいと常に思っています。GarageFarmブログページにある、K-POPのVFX制作を多く行っているBreezetreePlastic Beachのケーススタディにも非常に興味があります。」

様々なスタイルから学ぶ姿勢は、涌井さんの作品全体に表れています。 彼のポートフォリオにある作品は、一つ一つ決して被らないユニークで豊富な才能を示しています。

涌井嶺さん、今回はご協力ありがとうございました! 涌井嶺さんの作品の詳細については、彼の Web サイト www.raywakui.com をご覧ください。

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