レンダリングを行うロボット

レンダリングを行うロボット

今回の記事では、3D制作における人工知能の役割と、それが 3D モデリング、レンダリング、レンダーファームの未来にどう影響していくのかを探っていきます。

2022 年、チャンス・ザ・ラッパーやレブロン・ジェームズといった有名セレブを含む多くの人々が、ソーシャルメディアのプロフィール写真を変更しました。彼らはカラフルで魅力的なアバターをアップし、これらの新しいプロフィール写真はあっという間にソーシャルメディア上に溢れかえりました。

多くの人はこれに好印象を持ちましたが、同時に別の多くの人々は反対の意見を持ちました。

なぜでしょうか?それは、これらの作品がLensaというアプリを使って人工知能(AI)によって作成されたものだったからです。これらの画像は、AIプラットフォームが本物のアーティストの作品を学習し、盗用して作成したと考える人々がいたため、議論や炎上にさえ発展しました。Lensa、Dall-E、Jasperのようなソフトウェアが、いずれアーティストの仕事を奪うことになるのではないかという懸念があり、その日は近いと考える人々がいるのです。

Robots who render
DALL-E 2

さて、この議論についてどちらの意見を持つにせよ、ひとつだけ確かなことがあります。それは、AIは人間生活のほとんどすべての分野で大きな変化をもたらしているということです。出会い系アプリ、スマートホーム、株取引、チェスの試合、マーケティング・キャンペーンの作成、さらには気候問題の解決策の発見などにも影響を及ぼしているのです。Lensaのようなプラットフォームやテキストから画像へ変換するシステムなどの人気が高まっていることは、芸術でさえAIの影響を受けていることを示しています。

これには、従来は人間の労力と才能が必要だった3Dグラフィックス制作の分野も含まれています。では、AIと3Dグラフィックスの関係とは一体どういうものなのでしょうか?

AI は、その性質上 (人工的なものに「自然」という言葉を使うのは奇妙ですが、ここで言います。余談です)、ほとんど何でもできるように訓練することができ、そのため 3D への影響は、システムの特定部分の自動化にまで及びます。 3D ワークフローがワークフロー全体を引き継ぐ可能性があります。 そして、3Dに関するAIの開発で特に興味深い(あるいは怖い)分野のひとつが、モデリングへの応用です。

AIと3Dモデリング

3Dグラフィックスを作成するプロセスにおいて、モデリングは最初のステップで、オブジェクトやサーフェスの3次元表現を構築することを含みます。モデリングには多くのスキルと練習が必要で、注意力と時間を要する作業です。3Dモデリングアーティストには、芸術家と職人の両方の能力が必要となります。さらに、解剖学(キャラクターのモデリングの場合)や建築学(空間や構造物の作成の場合)の理解も必要となり、ソフトウェアツール、コマンド、パラメータを使いこなす必要もあるのです。

考えてみてください。携帯電話のカメラで何かの物体をビデオで撮影し、そのビデオを特別なソフトウェアに送り、数分以内にその物体の3Dモデルが完成するとしたら。実はこれこそが、NvidiaのInstant NeRFテクノロジーで可能なことなのです。さらにテクスチャ、照明、リアルなレンダリングを備えた完全な3Dシーンを生成することもできます。これらはすべて、わずか数枚の静止画か、携帯電話で撮影した短い動画で作成可能なのです。

そう、AIがそれを可能にしたのです。

素晴らしいと思いますか?それとも恐ろしい? 繰り返しになりますが、これは人によって違うでしょう。 しかし、AIが誕生してまだ日が浅いとはいえ、AIがすでにこのようなことを可能にしているのは事実です。それはすでに存在していて、利用可能なのです。そしてこれからさらに、より速く、より手頃な価格になっていくでしょう。

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AIと3Dレンダリング

それでは、3Dワークフローの最終段階であるレンダリングにおいて、AIがどのように影響するかを見てみましょう。レンダリングとは、モデリング、テクスチャリング、ライティングを駆使して作成した詳細な3Dシーンを、2D画像やビデオに変換するステップで、携帯電話、テレビ、映画館のスクリーンなどの2Dスクリーンで適切に表示できるようにします。

この説明だけだとシンプルに聞こえるかもしれませんが、これには多くのプロセスが関わっています。そのため、AIを応用する方法はたくさんあるのです。

では、低解像度、低フレーム レートのアニメーションを4K解像度に拡大するなど、スケールアップしたいとします。普通ならどうしますか?従来であれば、3Dソフトウェアで元のプロジェクトファイルに戻り、アニメーション全体をより高い解像度で再レンダリングする必要がありました。しかし、AIを使えば、元のプロジェクトファイルにアクセスすることなく、これを実現できます。Flowframesのようなソフトウェアツールを使用すると、低品質の3D素材の解像度を上げることができるのです。このプロセスは補間と呼ばれ、ソフトウェアがAIを使って不足するディテールを補い、アニメーションをより高い解像度でより良く見せてくれます。

AIの能力のおかげで、3Dアーティストや効率化を求める企業に新たな機会をもたらしました。 現在では、低解像度を使用して素早くレンダリングできるようになり、AIを活用してレンダリングしたフレームをアップスケールし、より高い解像度に品質を高めることができるようになっています。

では、レンダーファームにとってこれは何を意味するのでしょうか?

AI、3D、レンダーファーム

歴史上、新しい技術が広く使われるようになると、必ず勝者と敗者が生まれます。例えば、文字や出版が普及したとき、街頭演説は不要になりました。自動車が日常生活での馬の必要性を無くしました。携帯電話はポケベルのオペレーターを失業させ、インターネットの登場は、紙によるニュース、実店舗の書店、百科事典を衰退させました。

しかし、テクノロジーが仕事や役割を完全に消滅させるのではなく、進化させた例もあります。例えば、ATMが導入されても、銀行の窓口係は雇われ続けていますし、レフェリーは、ビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)が導入されてもフィールドで活躍し続けています。オンラインニュースは、ジャーナリスト以外が作成したコンテンツもありますが、依然としてプロのジャーナリストによって書かれたものが主流です。

そしてこれが、AIがクラウドレンダーサービスに与える影響だと私は考えています。

確かにAIは、先に説明したように、自分のコンピューターでレンダリングできるようになることで、個人の3Dアーティストや企業に大いに役立ちます。しかし大規模なレンダリングファームもAIにより効率が向上し、レンダリング時間は短縮され、コストも削減されて、パワーアップが可能なので、ローカル(個々のコンピュータ)でレンダリングするより効果的です。

レンダーファームのハードウェア的側面は、3Dアーティストや企業にとって重要であり続けるでしょう。AIはソフトウェアベースなので、ワークフローに対してソフトウェア側の改善しか提供できないのです。レンダリングは、本質的に計算を伴うタスクであるため、効率的であるためには常に強力なハードウェアに依存します。より多くのCPUコアとGPUメモリを持つことは、一貫して、より速く、より良いレンダリングをもたらします。3D技術が進歩するにつれて、レンダリングするシーンはますます複雑になり、作業負荷を処理するために、より強力なハードウェアが必要になるでしょう。

AIがレンダリングに与える影響は、3Dアーティストによって異なります。小規模なプロジェクトに取り組む学生やフリーランサーは、AIの進歩によってローカルレンダリングが現実的だと感じるかもしれません。しかし、ハイレベルなプロジェクトに携わるアーティストは、強力で効率的なレンダリングソリューションの必要とし、レンダーファームが常に必要となる可能性が高いです。さらに、AIはプロジェクトのシーケンスの最適化、フレームのトラブルシューティング、ノードの割り当て、より高度な価格設定によって、レンダーファームを強化することもできます。AIのサポートにより、レンダーファームのサービスはより簡単で使いやすいものになるでしょう。

つまり、AIはレンダーファームにとって脅威であると同時に有益なのです。

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結論

しかしAIが無視できない要素なのは事実です。プロジェクト制作のために多数いた3Dアーティストは減るかもしれませんが、3Dグラフィックスの分野における人間の才能、創造性、ユニークな視点の重要性を完全に置き換えることはできないでしょう。

同様に、AIは3Dレンダーファームに変化と強化の両方をもたらすでしょう。AI技術が進歩すれば、クラウドベースのファームでレンダリングをする小規模なプロジェクトは減る可能性があります。しかし、AIはレンダーファーム自体の効率向上にも貢献し、特に大規模なプロジェクトでは、より効果的で価値のあるものにすることができのです。AIはレンダーファームの運用方法を改善し、誰もがオンラインでファームを使用してプロジェクトをレンダリングすることが一般的になる可能性を秘めています。

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