過去 10 年間の新世代のゲームエンジン技術の進歩により、幅広いリアルタイムソリューションが、ベイク処理やプリレンダリングなどの多くのニーズに取って代わってきました。 これは、ゲーム開発でプリレンダリングが必要なくなることを意味するのでしょうか。 これに関して、ほとんどの場合答えはノーです。 今回の記事では、なぜ、そしてどのようにゲームビジュアルがプリレンダリングされ使用されるのか、そして今後どのようにゲーム業界にとどまっていくのかを解説します。
プリレンダリングコンテンツは、ゲームの公開前にレンダリングされた全てのコンテンツのことです。 これには、ゲーム内の画像やアニメーション要素、ビデオカットシーン、シネマティック、2D イメージ マップにベイクされた背景、または遠景の詳細などの静的なゲーム環境要素が含まれます。
プリレンダリングコンテンツは、1970年代と80年代に最初のビデオゲームが市場に登場して以来、ゲーム開発の一部となっています。 プリレンダリングされたカットシーン、シミュレーション、スプライト、およびその他の「ベイク処理された」コンテンツは、「The Last of Us」や「The Elder Scrolls」のような多くのゲームをすぐさま名作にします。
1980 年にリリースされた Pac-Man は、8ビットのキャラクターが生き生きとユーモラスに動くカットシーンで有名です。 カットシーンは、プリレンダリングコンテンツがゲームでどのように使用されるか示す、最も一般的な例です。 現代ではカットシーンを考慮せずにゲームを作成することは想像もできません。 過去 20 年間にリリースされたメジャーなゲームのほぼすべてに、プリレンダリング、リアルタイム、またはその 2 つを合わせたカットシーンが含まれています。
また、ゲームエンジンで効率的に再現することが不可能なコンテンツに、プリレンダリングコンテンツを利用しています。 例えば、火と水のシミュレーションなどです。忠実な再現度を維持しながらリアルタイムでレンダリングするには、大抵の場合必要な計算能力が大きすぎます。 1990 年代のバイオハザード シリーズのような一部のゲームでは、完全な2.5Dのゲーム内環境を生成するために、プリレンダリングコンテンツに大きく依存していました。
では、なぜカットシーンがゲームの制作過程で重要なのでしょうか?その答えは、クリエイティブな面と技術的な面でゲーム開発者とデザイナーが解決すべき課題にあります。 カットシーンは大抵、ゲームのストーリーの重要なポイントを伝えるのに最良であり、カジュアルなゲームプレイを映画のナレーションような目的を示すナビゲーターに変えることができます。 技術的な面では、ロード画面をただ表示してユーザーを不快にする代わりに、カットシーンをユーザーに表示することで、その間にローディングプロセスを隠すことができます。
ゲームでのカットシーンやシネマティクスは、プリレンダリングコンテンツが最もよくわかる例です。ただし、カットシーンの実装方法はあまり明確ではありません。 近年のリアルタイムレンダリングの進歩により、開発側はカットシーンをプリレンダリングするか、リアルタイムでレンダリングするか、または 2 つの方法を組み合わせて使用するかを選択できます。「The Elder Scrolls」の映画のようなシネマティックスは、リアルタイムでレンダリングすることはできず、通常は Maya または 3ds Max で作成され、ハイエンドのレイトレーシング レンダラーを使用してファームでレンダリングされます。
一方、ゲームプレイでのビジュアルの忠実性を再現するカットシーンでは、大抵ゲームのダウンロードサイズを節約するためにゲームエンジン内でレンダリングされます。 これらは、ビジュアルの忠実度とゲームのサイズとの兼ね合いを考慮して選びます。事前にレンダリングされた映像を使用すれば、低スペックのゲーム機やコンピューターでもトップクラスのグラフィックスを楽しむことができますが、リアルタイムのカットシーンを使用すると、プレイヤーのハードウェアによってビジュアルが制限されます。
3 番目のオプションは、ゲーム内の「リアルタイム」グラフィックスをハイエンドなハードウェアでプリレンダリングし、それを最終的なゲームでビデオカットシーンとして表示することです。このオプションは、ゲームプロジェクトに充分な資金がないために外部で製作されたカットシーンを開発することができないが、プレイヤーに最高の視覚効果を提供したいという場合によく使われます。
プリレンダリングされたビデオは、常にカットシーンだけに使用されるわけではありません。長いカットシーンのゲームプレイを中断することなく、短い「イベント シーン」もゲームプレイに混在しています。このようなコンテンツは、Assassin's Creed や RPG ゲームなどのゲームでよく見られます。
レンダリングされた要素に加えて、プリレンダリングされたコンテンツは多くの場合、ゲーム内でスプライトになります。 スプライトとは、フル3Dメッシュの代わりに 2Dや3Dゲームでレンダリングされる2Dグラフィックオブジェクト、または画像シーケンスです。 スプライトの利点は、2D の性質により、ゲームのパフォーマンスへの影響が最小限であることです。
2Dゲームの場合、大抵は環境全体がスプライトから構築されます。 しかし3D ゲームの場合、開発ではスプライトを遠くのオブジェクトのディティールのオプションとして使用するか、プレーヤーが 2D の性質に気付かないところで使用します。 たとえば、遠くのキャンプファイヤーのアセットの場合、2D スプライト シーケンスに変換する前に、Maya で高解像度の煙シミュレーションとしてレンダリングできます。 ほとんどのゲームエンジンはすぐに使用できるスプライトをサポートしており、様々なゲームでスプライトを見つけることができます。
スプライトは 2D オブジェクトですが、場合によってはセットで使用して、skyboxesなどのより複雑な環境要素を構築できます。 skyboxesは、5 ~ 6 個のスプライトタイルから作成して、ゲーム レベルの基本的な空または遠方の環境を生成できます。 skyboxesは、単一のプリレンダリングされた画像セット、またはアニメーション化された背景用のプリレンダリングされた画像シーケンスのセットです。 Skybox は、ゲーム エンジンで使用するために変換される前に、V-ray や Corona などのレイ トレーシング レンダラーを使用してプリレンダリングされることがよくあります。
ゲームでのプリレンダリングされたコンテンツの使用に関して、これまでの様々なゲームで、プレイヤーとゲームデザイナーの間で長い間議論の的となってきました。 一部のプレーヤーは、すべてのゲームコンテンツを可能な限りインタラクティブにすることを望んでいます。 つまりこの種のプレイヤーの場合、カットシーンとシネマティクスはプレイヤーをゲームの世界から引き離し、ただ単にストーリーを傍観させるだけだと感じるのです。
しかしその一方で、他のプレイヤーやゲーム デザイナーたちは、カットシーンやプリレンダリングコンテンツは、ストーリー主導型のゲームプレイの鍵になると思っています。カットシーンによる重要なストーリー要素なしで、The Last of Us のようなゲームを作るのは難しいです。 インタラクティブなゲームプレイが求められるのと同様に、ゲームのプロットを伝えるために、カットシーンのようなゲームプレイ以外のストーリーガイダンスが必要になることもあるのです。
もう一つの大事なポイントは、カットシーンを使用すると、ゲームのアート ディレクションをより細かく設定できることです。 たとえば、Mirror's Edge は、リアルなスタイルの 3D ゲームプレイ環境とは対照的に、カットシーンにまったく異なる 2D スタイルを使用しています。 反対にFinal Fantasy VII Remake のようなゲームは、信じられないほどリアルなビジュアルと上空からのシーンを作成しており、素晴らしいゲームの世界感を表現しています。そしてこれらの高品質なゲームのカットシーンとストーリーをつなぎ合わせて「カットシーン ムービー」を作成するファンも多くいます。
結局、プリレンダリングコンテンツをいつ、どのようにゲーム内に含めるかは、ゲーム開発者のストーリーとゲームプレイの目標に依存します。 間違ったタイミングでのシネマティックや場違いなスプライトはユーザーに不満を感じさせる可能性があります。 しかし、適切に配置されたカットシーンはゲームにストーリーの情報とナビゲーションを追加できます。 そのため、外部ツールとサーバーレンダリングを使用したゲームのプリレンダリングコンテンツの制作が未だに多いのです。
プリレンダリングされたゲーム要素は、限られたリソースを最大限に活用するためにゲーム テクノロジの限界を押し広げてきました。 映画のようなカットシーン、大規模なゲーム内シミュレーション、skyboxの雲の動きなど、ゲームアセットのプリレンダリングは、他の方法では実現できない独自のメリットを提供します。