正直なところ、映画とゲームの市場は飽和状態になっています。 ベテランの 3D アーティストでも初心者でも、3D制作のスキルを活かせる他の業界への転職を考えたことがあるかもしれません。 他の市場での可能性を真剣に検討している場合は、医療アニメーション業界を調べてみてください。 それは大きな市場で、毎年約 150 億ドルの収益を上げており、エンターテイメント以外のコンピュータアニメーションの業界において巨大な部分を占めています。
医療アニメーションについて話す前に、あなたの赤い心臓を思い浮かべてみてください。個別の機能を持つ心室、およびそれぞれが関連し合ってどう動くかなど、想像の中で全体を個別に分割できますか?血液はそこを介し、動脈と静脈のネットワークを通って移動します。 動脈の 1 つの小さな領域で特異的にプラークが蓄積しているとき、その部分で血液の流れが遅くなり、血圧が上昇します。そしてこれらがどのように心臓発作につながるか想像できますか?
こういった内容を、誰もが視覚的に想像できるわけではありません。 また、技術的なイメージを伝えるには、言葉や2Dの静止画だけでは不十分です。これは3Dアーティストの方なら特によくわかると思います。解剖や手術のビデオは別として、医師の場合は X 線、MRI、超音波などの他の手段をで医療プロセスを示すことができますが、医師ではない私たちにはよくわかりません。ベテランの医師でも医療用ビジュアルがコミュニケーションに必要です。そして患者や実践経験のない医学生には、静止画やぼやけた X 線や超音波の資料ではなく、複雑な詳細を3Dで見ることができる視覚補助が必要です。医療の現場では、最も小さなものの動きに気を付けることや、違った視点や不可能と思われるような視点で見ることが、生と死を左右する可能性があります。
3Dの医療用アニメーションは、おそらく最も速く、簡単で詳細に医療プロセスを患者や医学生、一般の人に理解してもらえる方法です。 たとえば、心臓病を治療する方法である血管形成術のプロセスを考えてみましょう(心臓発作のようなものを想像してみてください)。 これは静脈にカテーテルを挿入して、プラークの蓄積のブロックを解除することによって行われます。小さなカメラを使って静脈内の様子を表示できても、アニメーションでのプロセスの表示ほど明確ではありません。 そしてこれは医療用ビジュアル コミュニケーションが必要とされる理由の一つにすぎません。
そしてこれは、患者に内容を理解してもらうためのシミュレーションだけのものではありません。 特に医療機器、医療サービス、医療製品の販売など、収益性の高い産業で多くの用途があります。 医療用ビジュアルコミュニケーションの具体的な用途について詳しく知りたい場合は、このシリーズの次の記事をご覧ください。
宗教と芸術が常に関連し合ってきたのと同じように、芸術と科学も関連し合っています。 アーティスト、特に 3D アーティストは、視点や色だけでなく、他にも多くのことを考察し、光や物質に関して物理的にも理解しています。 全てのアーティストは大抵、人体に興味を持ち、古くから身体を描いてきました。 古代エジプト、バビロニア、中国、インドでは、動物の解剖学に基づいて、医療行為の図解記録が作成されていました。 特にギリシャは多くの貢献をしており、ギリシャ人のヘロフィロスは最初の解剖学者として知られており、人間の死体の解剖を始めた人物です。 しかし当時、人体に関する迷信的な信念があったため、解剖図はずっと後になってから登場することになります。
その後の中世では、犯罪者の死体を使って人間の解剖が行われました。 解剖は、解剖学者ではなく、理髪外科医(中世では理髪師が医療行為を行っていました)によって行われました。 解剖学者とその生徒たちは、ちゃんと見える距離に近寄ることさえしませんでした。 彼らは古代の解剖学者ガレノスの本を読み、理髪師に死体をどのように解剖すべきかを指示するだけでした。しかしすぐに、当時の解剖学のバイブルであったガレノスの本には、驚くべき量の誤りがあることをアンドレアス・ヴェサリウスが発見し、異議を唱えられることになりました。アンドレアス・ヴェサリウスが登場したのはルネッサンスの最盛期で、自由な思考と精神が尊重され、芸術と科学がそれまでにない形で共鳴し始めたときでした。
そしてレオナルド・ダ・ヴィンチほど、芸術と医学の融合を示した有名な人物はいないでしょう。人間の形に関する彼の未発表の研究は、重要な発見につながっていました。 現代におけるいくつかの発明や使用されている医療方法は、彼のアイデアと研究のおかげです。 彼やその他のルネッサンスの人々は、より深い研究方法と、正確で芸術的に美しいイラストを取り入れた医学文献を作り出しました。
解剖学的構造をイメージ化する新しい技術が発明されるたびに、医学は大きく飛躍し、無数の命が救われました。そしてほとんどの場合、これらのテクノロジーの発明は、アートやアーティストがきっかけとなりました。 たとえば19 世紀にカラー印刷がより一般的になると、解剖図が向上しました。 次に、シンプルなアニメーションの利用が検討され、パラパラ漫画やその他の古典的なアニメーションが、最終的には医学的および生物学的プロセスを示すために使用されました。
20 世紀には、ドイツの美術大学卒業生が医学の挿絵を描き始め、そのディティールの細かさに定評がありました。 この男性は、後にジョン・ホプキンス医科大学で最初の医学芸術部門の創設を監督したマックス・ブローデルでした。
1970 年、ディズニーのイマジニアで画家のフランク アーミテージは、解剖学的知識を利用して、アニメーション映像で使用される医療イラストを作成しました。1970年代には、コンピュータアニメーションでも 3Dの使用が始まり、90年代では 破壊不可能な液体金属のターミネーター、ジュラシックパークの恐竜、閉塞した静脈を示す医療ビジュアライゼーションなどで活かされています。
もちろん、コンピューター技術の大きな発展は、コンピューター アニメーションにつながっていきました。高品質な動画がMayaや3ds Maxなどでレンダリングされるようになり、開発によって積み上げられてきた技術が、医療を含む多くの業界のビジュアルコミュニケーションで見られるようになりました。現代はCGアニメーションの黄金時代と呼ばれることもあり、それは医療映像化においても同様です。 Ghost Productions、Random 42、Vessel Studios などのスタジオは、エンターテインメントにおけるVFX に匹敵する品質で、医療向けのアニメーションとイラストレーションを作成しています。
メディカルイラストレーションは、世界中の多くの学術機関で認められている専門分野です。 カリキュラムは、科学と芸術の分野を統合するように設計されています。 現代の医療イラストレーターのツールキットには、他の場所で使用されているのと同じ画像操作、ビデオ編集、および 3D プログラムが含まれています。
医療用ビジュアル コミュニケーションは、教育や販売促進の目的でよく使用されます。 おそらく最も一般的な用途は、薬品のコマーシャルです。 ヘルスケアのパンフレット、高校の教科書、ドキュメンタリー、教育ビデオでも見ることができます。
前述したように、医療用アニメーションだけの特定の要素や用途、3Dアーティストがチェックすべき関連ソフトウェアなどを記事にする予定です。その他の3D 業界関連の最新情報なども、フェイスブックやTwitterで更新していますので、是非ご確認ください。