リアルタイムレンダリングにおけるライトベイク完全ガイド

リアルタイムレンダリングにおけるライトベイク完全ガイド

ライティングは、奥行きやムード、リアリズムの見え方を左右するため、3Dシーンで最も重要な要素の1つです。ゲームエンジンやインタラクティブアプリのようなリアルタイムレンダリングでは、グラフィックのビジュアルのクオリティとパフォーマンスのバランスをとることは難しい部分です。ライトベイクは、ライティング情報を前もって計算し、テクスチャやマップとして保存する方法です。これらはリアルタイム再生時に使用することができ、ビジュアルクオリティを損なうことなくシーンを高速に実行することができます。このガイドでは、Unity、Unreal Engine、Blenderなどの3Dツールにおけるライトベイクの仕組みや効果的な使用方法など、ライトベイクに関する重要なポイントを解説します。

ライトベイクとは?基礎知識と利点

ライトベイクとは、前もって照明効果を計算し、静的データとして保存することです。これには、直接光、間接光、影、グローバルイルミネーションなどが含まれます。これらのライティングの情報は、レンダリング時に3Dモデルに適用される特殊なテクスチャである、ライトマップに保存されます。ライトベイクの主な利点は、リアルタイム・ライティングに必要な重い処理能力を必要とせずに、ソフトシャドウやバウンス光などの複雑なライティングを表示できることです。

ライトベイクの利点:

  1. パフォーマンス最適化:ライティングを事前に計算しテクスチャとして保存することで、リアルタイムに光の計算を行う必要がなくなり、レンダリングエンジンの負荷を大幅に軽減できます。これはビデオゲームのようなインタラクティブなアプリケーションにとって非常に重要です。
  2. ビジュアル品質の向上:ライトベイクを使うことで、間接光やグローバルイルミネーション、ソフトシャドウといった複雑なライティングをパフォーマンスに影響を与えることなく実現できます。これにより、より豊かでリアルなビジュアル表現が可能になります。
  3. リアルな影と光の相互作用:ライトベイクを使うことで、複雑な形状を持つ環境でも影のディテールや精度を高く保つことができます。これは、現実感のあるシーンを作るうえで非常に重要です。

一般的なライトベイクの要素:

  • ライトマップ: 計算されたライティング情報を保存するテクスチャ。
  • グローバルイルミネーション(GI): 光が表面でどのように跳ね返るかをシミュレートし、近くのオブジェクトの光の色や強さに影響を与える技術。

静的照明vs.動的照明vs. 混合照明: 正しいアプローチの選択

リアルタイムレンダリングでは、ライティングは「静的(スタティック)」「動的(ダイナミック)」「混合(ミックス)」の3種類に分類されます。それぞれの違いを理解することで、シーンの内容やパフォーマンスの要件に応じて最適な手法を選ぶことができます。

静的ライティング

静的ライティングとは、ライティングが事前に計算されてシーンに保存されているため、常に同じ状態を保つことを意味します。このタイプのライティングは、建物や背景環境など、動いたり変化したりしないシーンに最適です。ライトはセットアップ中に一度だけ計算され、ゲームプレイ中やシーンの実行中に更新されることはありません。

動的ライティング

動的ライティングとは、シーンの実行中に計算されるライティングのことです。つまり、ライトが動いたり、オブジェクトがリアルタイムの影を落としたり、時間帯や天候などに基づいて照明が変化したりします。動くキャラクター、乗り物、ダイナミックな環境など、リアルタイムで光に反応する必要があるものがシーンにある場合に重要です。

混合ライティング

混合ライティングは、静的ライティングと動的ライティングを組み合わせた手法です。この方法では、環境光や遠くの太陽光などの静的な光はあらかじめベイク(事前計算)され、一方でスポットライトやプレイヤーが操作するライトなどの動的な光はリアルタイムでレンダリングされます。これにより、パフォーマンスと柔軟性の両立が可能になります。

正しいアプローチの選択:

  • 静的ライティング:インタラクティブ性がなく、変化しないシーンに最適です(例:背景や建築物のビジュアライゼーションなど)。
  • 動的ライティング:プレイヤーの操作や時間帯の変化などに応じて照明が変化するなど、リアルタイムで変化するゲームや環境に適しています。
  • 混合ライティング:シーンの一部が固定されていて、別の部分は動きや操作によって変化する必要がある場面に最適です。たとえば、屋外のシーンで空や太陽光はあらかじめ固定されている一方、キャラクターが持つ松明が動きに合わせてリアルタイムで光を放つようなケースです。

一般的なエンジン(Unity、Unreal、Blender)におけるライトベイクのワークフロー

ライトベイクの手順は、使用する3Dソフトウェアやゲームエンジンによって多少異なりますが、主な内容は同じです。以下では、Unity、Unreal Engine、Blenderでのベイクドライティングの基本的な設定手順を説明します。

Unity

  1. ライトベイクを設定する: Unityで、光源を選択し、ライト設定に行き、モードを「Baked」に変更します。これでエンジンがその光源のライティングを事前に計算するようになります。
  2. ベイク設定: ライティング設定パネルを開き、ライトマップ解像度、ベイク品質、グローバルイルミネーション設定などのパラメータを調整します。
  3. ライティングをベイクする: すべての設定が終わったら、「Generate Lighting 」ボタンをクリックします。するとUnityがシーン内のすべての静的オブジェクトのライトマップを作成します。

Unreal Engine

  1. 静的ライティングを有効にする: 光源の設定で 「Static 」に設定します。
  2. Lightmass の設定: Unreal は、Lightmass を使用してグローバル イルミネーションとベイク照明を計算します。Lightmass 設定を調整することで、クオリティを向上させたり、パフォーマンスを高速化することができます。
  3. ライティングをベイクする: ”Build Lighting”ボタンを押すと、シーン内の全ての静的オブジェクトのライティングを計算して保存します。

Blender

  1. ライトベイクを設定する: BlenderのRender Propertiesパネルで、光源の 「Bake 」を有効にします。
  2. ベイクタイプ: Diffuse、Shadow、CombinedなどのBake Typeオプションから選択し、ベイクする情報の種類を指定します。
  3. ライティングをベイクする: 解像度とその他のパラメータを設定し、「Bake 」をクリックしてライトマップを生成します。

アセットの準備:UV展開、ライトマップ解像度、テクセル密度

シーンにライティングをベイクする前に、アセットを正しく準備する必要があります。具体的には、UVが適切にアンラップされていることを確認し、適切なライトマップ解像度を選択し、テクセル密度を一定に保ちます。

ライトマップのUVアンラッピング

UVアンラップとは、モデルの3Dサーフェスをフラットな2Dレイアウトにする作業で、テクスチャやライティングを正しく適用できるようにします。ライトマップでは、UVが重ならず、等間隔に配置されていることが非常に重要です。そうしないと、継ぎ目が見えたり、不均一な影ができるなど、ライティングの問題が発生します。

ライトマップの解像度

ライトマップの解像度は、ライトベイクの品質とディテールに直接影響します。解像度が高ければ高いほどライティングの質は良くなりますが、その分メモリも消費します。見た目の良さと動作の良さの適切なバランスを見つける必要があります。一般的なライトマップのサイズは512x512、1024x1024、または2048x2048で、オブジェクトの大きさやカメラの近さによって異なります。

テクセル密度

テクセル密度とは、3Dモデルの表面積あたりに割り当てられるテクスチャのピクセル数(テクセル数)を意味します。シーン内のすべてのオブジェクトでテクセル密度を統一することで、テクスチャの品質を均一に保ち、伸びやぼやけといった問題を防ぐことができます。Blenderのツールを使えば、テクセル密度の調整をより効率的かつ自動的に行うことが可能です。

グローバルイルミネーションとシャドウベイク:リアルさとスピードを両立するテクニック

ライトベイクは、ただ直接光を焼き込むだけではありません。リアルに見せるためには、グローバルイルミネーション(GI)や影も一緒にベイクする必要があります。グローバルイルミネーションとは、光が壁や床などの表面に当たって跳ね返り、他のオブジェクトにも影響を与える光の広がり方を再現するものです。GIと影を事前にベイクしておけば、リアルな見た目を保ちながら、リアルタイムで毎回計算する必要がなくなり、パフォーマンスも大きく向上します。

グローバル・イルミネーションをベイクするテクニック

  • フォトンマッピング: 光が表面に当たって跳ね返り、シーン内の他の場所へと広がる様子を再現する技法です。照明がより自然で柔らかく見え、シーン全体のリアリズムが高まります。
  • イラディアンス・キャッシング:シーン内のさまざまな位置で計算された照明情報を保存し、それらのデータをもとに周囲のエリアの照明を補間することで、全体の照明計算を効率化する手法です。この方法により、複雑なグローバルイルミネーションの計算時間を大幅に短縮できます。

シャドウベイク

シャドウベイクは、影を事前に計算してライトマップに保存することで、静的なオブジェクトに対してリアルな影を描写しながら、リアルタイムでの影の計算負荷を軽減する手法です。影がシーンに自然に溶け込むようにするためには、シャドウの柔らかさ(ソフトネス)や解像度などの設定にも注意を払うことが重要です。

ライトマップの最適化:圧縮、アトラシング、メモリ使用量の削減

ライティングがベイクされたら、メモリ使用量を減らし、ロード時間を短縮するためにライトマップを最適化する必要があります。そのために、いくつかのテクニックを使います:

圧縮

ライトマップは圧縮することで、ビジュアル品質を大幅に損なうことなくサイズを縮小できます。多くの3Dソフトやゲームエンジンはライトマップの圧縮に対応しており、特にモバイルゲームやメモリに制限があるアプリケーションで効果を発揮します。

アトラシング

アトラシングは、複数のライトマップを1枚の大きなテクスチャにまとめて詰め込む技術です。これにより、エンジンが扱うテクスチャの数を減らせるため、メモリの節約になり、大規模なシーンでもパフォーマンスが向上します。

メモリフットプリント

ライトマップのメモリフットプリントを最適化することは、パフォーマンスを維持するうえで非常に重要です。ライトマップの解像度を調整したり、圧縮を使ったり、UVを正しくパックすることで、大規模なシーンでもライトマップが使うメモリを大きく減らすことができます。

ありがちなアーティファクト(継ぎ目、にじみ、しみ)の対処法

ライティングをベイクするとき、よくある問題として継ぎ目、光のにじみ、ムラなどのアーティファクトが発生することがあります。これらは最終的なレンダリングの品質に影響し、照明が不自然またはリアルに見えなくなる原因になります。

継ぎ目

継ぎ目は、UVアイランドがずれていたり、テクスチャがスムーズに接続されていない場合に発生します。これを修正するには、UVアンラップが正しく行われていることを確認し、Texel Density Checkerのようなツールを使ってテクスチャの品質を均一に保ちましょう。

ライトブリーディング

ライトブリーディング(光のにじみ)は、光があるべきでない領域に広がるときに発生します。通常、継ぎ目がうまく塞がれていないか、ライトマップの解像度が低すぎることが原因です。ライトブリーディングを止めるには、ライトマップの解像度を上げ、UVアイランド間に十分なスペース(パディング)を確保してください。

ムラ

ムラは、ベイク処理でライトデータがスムーズにブレンドされない場合に発生します。ベイク設定を変更したり、より高いライトマップ解像度を使用したり、ライティング設定を正確にしたりすることで修正できます。

まとめ

ライトベイクは、リアルタイムレンダリングでビジュアルの質と処理速度のバランスを取るためにとても効果的な方法です。ライトベイの基本を理解し、シーンに合ったライティング方法を選び、アセットを最適化することで、パフォーマンスを落とさずに美しい仕上がりを実現できます。UnityやUnreal Engine、Blenderを使う場合でも、ライトベイクの流れをマスターすれば、3D制作のスキルが向上し、よりリアルで没入感のある環境を作れるようになります。ライトベイクを楽しんでください!

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