3Dアーティストを目指す人にとって、仕事につながる機会を得ることは大きな壁です。自分の実力に不安を感じたり、作品を発表したり制作現場で経験を積んだ機会が少ないなど、最初の一歩を踏み出せない人もいます。そうした人のために、高品質なアニメーションを制作するスタジオ「Garnamatac」は、ジョージアの3Dアーティストが業界で活動を始めるための機会もつくっています。
GARNAMATAKIANSについて
Garnamatacは、ジョージアの首都トビリシを拠点とする小規模のアニメーションスタジオです。2018年の設立以来、Nickelodeonのような大手企業から、ジョージア・イノベーション・テクノロジー庁といった地元のクライアントまで、幅広いプロジェクトに携わってきました。
Garnamatacの特徴は、社会的なテーマを意識しながら、地元のアニメーション業界の発展にも取り組んでいることです。4人の創設者は、活動を始めた頃からビジョンを共有し、短期的な利益よりも、長く続けられる価値や作品のクオリティを大切にしてきたといいます。その積み重ねによって、Garnamatacは作品を通じて認知を広げ、クリエイティブなコミュニティとのつながりも築いてきました。
自分たちで定めた価値観に基づき、ギャンブル、アルコール、たばこ、食肉関連、軍事、政治に関わるプロジェクトは受けないことを、全員一致で決めています。その一方で、社会課題に取り組むプロジェクトについては、予算や工数、スケジュールを調整しながら、できる限り協力できるようにしています。

企業案件や広告制作が中心になりがちな業界において、Garnamatacの取り組みは、自分たちなりの考え方で業界に関わることができる、ひとつの例といえます。
Training-for-Lifeを通じたアーティスト支援
Garnamatacはアニメーション制作を手がけるだけでなく、ジョージアのアニメーション業界の発展にも取り組んでいます。クライアントに質の高い制作サービスを提供すると同時に、アニメーション業界で働きたい人に、魅力的な働き方やキャリアの選択肢を示そうとしています。

「私たちは、GARNAMATAKIANSの全員が仕事を楽しめることを大切にしています。そして、それぞれが何らかの形で意義を感じられるプロジェクトに取り組めるようにしています。スタジオのスタートは、決して華々しいものではありませんでした。だからこそ初心を忘れずに、成長を続けるジョージアのアニメーション業界に貢献していきたいと考えています。」
こうした考え方のもと、GarnamatacはUSAIDのEconomic Security Programと協力し、若手のビジュアルアーティストを育成する教育プログラム「Training-for-Life」を立ち上げました。この取り組みは、地元のアーティストを支援するだけでなく、成長を続けるスタジオにとって、継続的に人材を採用していくための仕組みにもなっています。
ワークフロー
Garnamatacでは、アニメーション制作にBlenderをメインのツールとして採用し、MayaやBlackmagicのFusionと併用しています。コミュニティとの関わりや社会的な価値観を大切にするスタジオにとって、オープンソースのBlenderは相性のよい選択でした。
「さまざまなツールが揃っていること、オープンソースであること、そして困ったときに助け合える活発なコミュニティがあることが、Blenderを選んだ理由です。ルックデベロップメント、シェーディング、レンダリングの機能では、作業しながら結果をすぐに確認できます。そのため、修正や調整を進めやすいと感じています。機能によっては、ほかのソフトに比べて完成度が高くないと感じる部分もありますが、Blenderの開発チームの使いやすさを保つための努力が感じられます。私たちアーティストとしては、その点を本当に高く評価しています。」
近年、GarnamatacはNickelodeonの「The Can’t Stop Smiling」ミュージックビデオなどのプロジェクトに携わっています。本作では、Cartunaがプロデュースに加え、プリプロダクションとクリエイティブディレクションを担当しました。Garnamatacは、それ以外の3D制作とアニメーション工程を担当しています。
現在チームは、自主制作の短編映画プロジェクトに向けて、プリプロダクションの準備を進めています。Garnamatacは、自分たちの作品を制作することで、新しい表現や制作手法を試せると考えています。商業案件は日々のスタジオ運営を支える大切な仕事です。一方で、自主制作や社内企画は、メンバーの創作意欲を高めたり、ほかのクリエイターと交流したりするきっかけになります。こうした活動も、アニメーション業界を支える要素のひとつです。

「ここ数年で、自主企画や個人の取り組みに時間を使えるだけの安定した基盤を築くことができました。これからは少しずつ、教育を通じたコミュニティづくりにも力を入れていきます。また、地元のスタジオが自分たちのクリエイティブな制作を主体的に進められるよう、支援していきたいと考えています。」
GarageFarmとの連携
Garnamatacは、大規模なプロジェクトやレンダリング量の多い案件で、GarageFarmのオンラインレンダーファームを利用しています。これまでにBlenderとMayaのレンダーファームを使い、合計50,000フレーム以上をレンダリングしてきました。最近手がけた「Can’t Stop Smiling」だけでも、4,000フレームをレンダリングしています。サポート体制に加えて、制作スケジュールの中で必要なレンダリング量を正確に見積もれることも、GarageFarmを選んだ理由のひとつです。以前にオンラインレンダリングで苦い経験をしたことがあり、当初は再び利用することに慎重だったといいます。

「最初のきっかけは、トライアルクレジットでした。プロジェクト全体を移行する前に、リスクなくテストできたからです。また、カスタマーサービスがきちんと機能していることや、24時間いつでも詳しいスタッフのサポートを受けられることもわかり、導入まで驚くほどスムーズに進みました。トライアルと手頃な価格に惹かれて使い始めましたが、今も利用を続けている理由は、便利さと安心感にあります。以前はレンダーファームで苦い経験をしたため、かなり慎重になっていました。しかし今では、GarageFarmはワークフローの一部になっています。GarageFarmを導入したことで、品質を落とさずにレンダリング時間を短縮できました。そのぶん制作全体を早く進められるようになり、フレーム数の多い大規模な案件にも、以前より安心して取り組めるようになりました。」
最初にレンダーファームを利用したきっかけは、ある案件で通常とは異なる制作工程が必要になったためです。レンダーファームを使うことで、最品質を落とさずに、特殊な制作工程にも対応できました。
「制作スケジュールを立てる際、もっとも見通しを立てにくいのがレンダリングです。プロジェクトの規模が大きくなるほど見積もりのずれも大きくなり、納期に遅れることが多くなります。納期に遅れるスタジオだと思われるのは避けたいです。『The Can’t Stop Smiling』のミュージックビデオは、企画や絵コンテなどのプリプロダクションから、制作、GarageFarmでのレンダリング、コンポジットやカラーグレーディングといったポストプロダクションまでを含めて、3か月で完成させました。もしGarageFarmを利用していなければ、自分たちのマシンだけでレンダリングを行うには、制作期間の半分を費やす必要があったでしょう。」

変化する業界のなかで、次のステップへ
Garnamatacは、地域やコミュニティとの関わりを大切にしながらスタジオを運営しています。また、GarageFarmを利用することで、レンダリング量の多い大規模な案件にも対応できるようになりました。今後は、MayaやBlenderに加えてHoudiniも活用し、これまでより複雑な表現やシミュレーションを制作に取り入れることを考えています。Houdiniには、ほかのソフトでは扱いにくいプロシージャル制作やシミュレーションの機能が揃っています。さらに、見た目や質感を調整するルックデベロップメントの作業を早めるために、Clarisseの導入も検討しています。
「大量のデータをスムーズに扱えるClarisseを使えば、ルックデベロップメントの作業を大幅に速くできると思うので、導入を検討しています。」
もちろん、AIも今後のスタジオ運営に関わる重要な技術になると考えています。チームは、AIによって進化する次世代のシミュレーションツールにも注目しています。
「AIは、シミュレーションのあり方を変えるでしょう。AIによって物理ベースのシミュレーションをより高精度に近似できるようになりました。近い将来、近似なしで物理演算をリアルタイムにシミュレートできるようになり、真のフォトリアルな表現が実現するでしょう。」
Garnamatacは、業界のトレンドやニーズに柔軟かつ迅速に対応し、スタジオ業界に独自の視点をもたらしています。成長中のスタジオの多くが企業的な雰囲気を強めるなか、彼らは「Training-for-Life」プログラムを通じて、アニメーション業界のニーズに根ざしたチームづくりを続けています。社会的な活動への取り組みも素晴らしく、クライアントやプロジェクトの実績も同様に魅力的です。
Garnamatacの作品やポートフォリオは、Behanceでご覧いただけます。スタジオの最新情報は、FacebookとInstagram(@garnamatac)でも発信しています。



