ペドロ・コンティとディエゴ・マイアが手がけた、エミシーダのアニメーションMV
ブラジルのアニメーター/映像監督ペドロ・コンティが、長年の友人であるディエゴ・マイア、そしてエミシーダ本人とともに「Quanto Vale o Show memo?!」のミュージックビデオを制作しました。ブラジルの暮らしや文化を、個人的な視点と奥行きのある映像で描いた本作には、記憶やアイデンティティ、強い感情が幾重にも重ねられています。GarageFarm.NETのレンダリングも活用しながら、多彩なシーンで構成された映像作品になっています。
この映像は、1988年から2003年までのブラジルを描いたもので、歴史を説明するのではなく、当時の出来事や記憶を断片的なイメージとして重ねています。ペドロは技術を見せることではなく、作品を通して、そこにある現実や感情をまっすぐに伝えることに重点を置きました。
「アートをつくることは、私にとって選択肢の一つではありません。人生で起こることを整理し、切り拓いていくための方法なのです。最初は生活の一部でしたが、やがて仕事になりました。」
音楽からアートへ――創造の始まり
ペドロがアニメーションの道に進むまでには、長い創作の道のりがありました。3Dソフトに触れるずっと前、ブラジルで育った彼にとって、最初の表現手段は音楽でした。幼い頃はフルートを始め、その後トランペット、アコースティックギター、エレキギターへと演奏する楽器を広げていきます。どの楽器も、彼が自分自身と向き合い、気持ちを表現するための大切な手段でした。高校時代、2人の友人から絵を教わったことが大きな転機になります。そこで新たな表現の可能性に出会い、2005年、彼は3Dアニメーションの世界へ進みました。

現在のペドロは、日々の暮らしのなかに創作のヒントを見つけています。人々の姿や建築、何気ない日常の習慣。そうした観察を自分のなかで受け止め、形にしたものが彼の作品です。
記憶とハイブリッドな手法で作り上げられたミュージックビデオ
『Quanto Vale o Show memo?!』は、ブラジルで育った記憶と、その時代・場所ならではの空気感を描いた作品です。ある世代を形づくった風景や感覚が、映像のなかに息づいています。ペドロ、ディエゴ・マイア、エミシーダのコラボレーションは、長年の友情と信頼のもと、率直に意見を交わしながら実現しました。
エミシーダ、ディエゴ・マイア、そして私は長年の友人です。お互いをよく知る関係だったからこそ、人生で経験してきたことを飾らずに話し合えました。だからこそ、作品づくりのあらゆる判断が、無理なく自然と決まっていきました。どれもこれも、私たち自身の体験から生まれたものです。
物語は、記憶の断片をつなぎ合わせるようにしてつくら、楽曲の構成にもそれが反映されています。バラバラだった記憶のピースがつながるにつれ、次第にシナリオができあがっていきました。制作チームは早い段階から、自分たちの文化や日常をありのままに描こうと決めていました。それは、理想化されたブラジルではなく、彼らが実際に知っている、等身大のブラジルの姿を映し出すことです。

こんなエピソードがあります。作品中に登場する 1990 年代の刑務所銃撃事件の現場を、ペドロが再び訪れたときの出来事です。彼はその場所の近くで育ちました。刑務所はすでになく、今は公園になっています。しかし、当時の壁の一部がまだ残っていました。

現地を訪れたのは、その場所が持つ空気を改めて感じるためでした。高い壁の圧迫感や、その前に立つ人がとても小さく見えたことを覚えています。映像に加えた要素は、どれも実際の記憶や現地で得た感覚をもとにしています。
制作には、複数のソフトを組み合わせたワークフローが採用されました。2DアニメーションはBlender、立体的な背景や空間の制作には3ds Maxを使用し、レンダリングはV-Rayで行っています。コンポジットはAfter Effects、最終的な編集はPremiereで進められました。すべてをゼロから3Dでつくり込むのではなく、物語を伝えることを優先して、あえて工程をシンプルにしたそうです。
旅として見せるための工夫

この作品で最も大きな課題となったのは、技術面ではなく、映像の構成でした。35を超えるシーンをつなぎながら、カメラの動きそのものにも役割を持たせ、時間の流れをひとつの旅として感じられるようにする必要がありました。
観る人に、記憶をたどりながら時間の中を旅しているように感じてもらいたいと考えていました。
そのため、時代ごとの背景や細かな描写については、綿密なリサーチを行っています。また、各シーンのスケールも制作の途中で変化していきました。当初はストップモーション用の模型のような小さな空間を想定していましたが、制作を進めるうちに、登場人物の感情や場の空気を伝えるには、背景にもより広がりが必要だとわかってきたのです。結果として、空間の大きさは最初から決められていたものではなく、作品をつくりながら少しずつ見えてきました。
アイデアの流れを止めないためのレンダリング
ペドロの制作は、映像をつくる感覚に近いものです。個々の素材を一つずつ考えるのではなく、シーン全体の構成やカメラの動き、空間の関係、光の当たり方をまとめて捉えています。そのため、レンダリングは最後に行う工程ではなく、制作の初期から繰り返し取り入れられています。シーン全体を低解像度で何度も出力し、要素同士がどう見え、どう影響し合うかを確認しながら、映像を組み立てていきます。
シーンの大まかな配置を決め、簡単にライティングを設定したうえでレンダーファームに送り、仕上がりを確認します。この工程は、私のデザインプロセスに欠かせません。最初のレンダリングで得られた結果をもとに次の判断を下し、調整を繰り返し、映像が決まるまで改良を重ねていきます。
より効率よくレンダリングできる方法を探していたとき、友人からGarageFarm.NETを勧められました。まずは小規模なプロジェクトで試し、使い心地や制作との相性を確認していったそうです。『Quanto Vale o Show memo?!』の制作が始まる頃には、すでに制作フローの一部として十分に検証されていました。

その効果は大きく、ペドロ自身も「手元のワークステーションだけでは、このプロジェクトを完成させるのは不可能だった」と振り返っています。シーン数とフレーム数が多く、1台のマシンで処理できる規模を大きく超えていたためです。GarageFarm.NETにレンダリングを任せることで、ペドロは出力を何日も待つことなく、シーンごとに複数のバージョンを試せるようになりました。その分、制作の途中でも細かな調整や判断を重ねながら、映像を仕上げていくことができました。
GarageFarmを活用しながら制作フローを進めることで、大きく効率化できました。レンダリング結果をすぐに確認できるため、複数のバージョンを試しながら、その都度必要な判断を進められました。
サポートチームの対応も迅速で、制作中に発生した小さな問題にもすぐに対応してもらえました。ペドロは、全体を通してスムーズかつ効率的に制作を進められたと振り返っています。
これからの取り組み:新しいスタイル、短編映画、展示会
ペドロは現在、新しい表現スタイルにも挑戦しようとしています。すでに複数の短編映画を書き上げており、それぞれ制作を進めているところです。また、ここ数年に手がけてきた自主制作作品を集めたアニメーション展を、ブラジルで開催する計画もあります。作品をより多くの人に届けるとともに、若いブラジルのアーティストがアニメーションの道を目指すきっかけになればと考えています。

ペドロにとってレンダーファームは、単に作業を効率化するためのものではなく、3Dアーティストが自由に制作するために欠かせない存在です。
「レンダーファームを使うことで、技術的な制約に縛られず、思いついたアイデアをすぐに形にできます。数秒の映像を確認するために何日も待つ必要もありません。今では制作に欠かせないものですし、これなしで映像をつくることは考えられません」
ペドロ・コンティの映像は、これからも進化し続けます。描きたいシーンや、アニメーションにしたい思い出、スクリーンに映し出したいブラジルの姿がまだ残されているからです。
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ペドロ・コンティとディエゴ・マイアの作品に興味を持った方は、ぜひ以下もご覧ください。
ペドロ・コンティ(ウェブサイト): https://www.pedroconti.com/
ペドロ・コンティ(Instagram): https://www.instagram.com/pedrodtconti
ディエゴ・マイア(Instagram):https://www.instagram.com/miragemmaia/



