この記事のポイント
- 世界のVFX市場は、2025年の124億8,000万ドルから2026年には139億4,000万ドルへ成長すると予測されています (BusinessResearch)。
- バーチャルプロダクション市場は、2025年の28億ドルから2026年には33億ドルへ拡大すると予測されています (GrandViewResearch)。
- VFX制作では、AIによる繰り返し作業の自動化が進み、アイデアの検討や表現の試行錯誤にもかかる時間が短縮されています。
- リアルタイムレンダリングやバーチャルプロダクションによって、映画制作の早い段階からVFXを取り入れられるようになっています。
- クラウドレンダリングの活用により、スタジオの規模を問わず、高性能な計算リソースを利用しやすくなっています。
- これからのVFX制作では、自動化やレンダリング技術とアーティストの専門知識を組み合わせ、各工程をスムーズにつなぐ制作体制が重要になります。
概要
AI、リアルタイムレンダリング、バーチャルプロダクション、クラウドコンピューティングが日々の制作に取り入れられ、VFXの制作現場は変わりつつあります。アーティストは制作の早い段階から映像のアイデアを試し、一部の技術的な作業を自動化できるようになっています。また、レンダーファームなどを活用すれば、手元の機材だけに頼らず、必要に応じて処理能力を補うこともできます。スタジオでも、チームで連携しやすく、修正にも素早く対応できる柔軟な制作体制の導入が進んでいます。一方で、こうした技術を活用するには、作り手の意図をどこまで反映できるか、ツール同士の互換性をどう確保するか、制作コストをどう管理するかといった課題にも向き合う必要があります。
テクノロジーが変えるVFX制作
VFX制作では、表現したい映像と技術的な制約をどう両立させるかが、常に課題となってきました。アーティストは、ますます精緻になる背景や複雑なシミュレーション、負荷の高いレンダリングに取り組みながら、修正への対応や厳しい納期にも追われています。これまでは、こうした制作を支えるために、専用ソフトウェアや高性能なワークステーションを手元にそろえ、制作工程を綿密に組み立てる必要がありました。

現在、こうした制作現場に新しい技術が広がり、作業の進め方も変わり始めています。これまで手間と時間がかかっていた作業をAIがサポートし、リアルタイムエンジンを使えば、撮影しながらシーンの仕上がりを確認できます。さらに、クラウドを活用することで、必要なときにレンダリング用のリソースを増やせるようになりました。
業界の推計によると、世界のVFX市場は2025年の124億8,000万ドルから、2026年には139億4,000万ドルに成長すると予測されています(BusinessResearch)。デジタルコンテンツへの需要が続くなか、こうした技術の進歩は、VFXアーティストの作業の進め方や、スタジオの制作体制にも変化をもたらしています。
リアルタイムレンダリングでつながるVFXの制作工程
従来のVFX制作は、コンセプトの検討からモデリング、アニメーション、シミュレーション、ライティング、レンダリング、合成へと、いくつもの工程を経て進められてきました。こうした工程の重要性は今も変わりませんが、制作ツールの進化によって、各部門が早い段階から連携し、モデルや素材などの制作データもスムーズに共有できるようになっています。
たとえば、撮影準備の段階でデジタルの背景や空間を作り、リアルタイムエンジンで見え方を確認しながら、撮影中から撮影後の仕上げまで継続して作り込めるようになっています。監督やVFXスーパーバイザーは、時間も費用もかかる最終レンダリングに進む前に、演出や表現の方向性をじっくり検討できます。
バーチャルプロダクションでは、デジタルで作った背景と実際の撮影を組み合わせます。たとえば、俳優の背後を大型のLEDスクリーンで囲む「LEDボリューム」では、スクリーンに背景映像を映し出し、カメラの動きに合わせて背景の見え方を変えることで、自然な遠近感を表現します。こうした撮影手法への関心は高まっており、世界のバーチャルプロダクション市場は2025年に約28億ドルと評価され、2026年には33億ドルに達すると予測されています(GrandViewResearch)。
オフラインレンダリングが今も重要な理由
リアルタイムレンダリングは大きく進化していますが、高品質なVFX制作では、今もオフラインレンダリングが重要な役割を担っています。複雑な光の表現や精密なシミュレーション、リアルな質感などを狙いどおりに仕上げるには、時間をかけて計算する必要があるためです。そこで、多くの制作現場では両者を使い分けています。カメラワークやアニメーション、シーンの配置はリアルタイムツールで確認し、より精密な計算が必要な最終映像はオフラインレンダリングで仕上げます。こうすることで、調整の結果をその場で確認できる手軽さと、最終的な映像の品質を両立できます。
AIで変わるVFXの制作作業
VFXの制作現場では、AIも制作ツールの一つとして使われるようになっています。特に、同じ処理を繰り返す画像作業や、制作の初期段階でアイデアを試す場面で活用が進んでいます。一つのAIツールですべてをこなすのではなく、工程や目的に応じて複数のツールを使い分ける形で、制作に取り入れられています。
繰り返し作業の自動化 ー AIを活用したツールは、ロトスコープによる被写体の切り抜きや特定のオブジェクトの分離、不要な映り込みの除去、画質の改善などに役立ちます。こうした作業では、多くのフレームにわたって細かな調整を繰り返す必要があるため、自動化の効果が期待できます。

コンセプト制作とプリビズの効率化 ー 生成AIを使えば、精密な3Dモデルを作り込む前に、背景のデザインや照明、構図、映像の雰囲気など、さまざまなアイデアを試せます。そこで得られたイメージは、モデリングやシーン制作、映像の構成や動きを事前に確認するプリビズの参考として活用できます。
ただし、AIが生成する映像には、表現の一貫性や細かな調整のしやすさに課題があり、複数のショットで同じディテールを保つことも容易ではありません。プロのVFX制作では、同じ条件で同じ結果を再現できることが求められるため、従来の3D制作手法や手作業による仕上げも、引き続き重要です。
クラウドレンダリングで広がるVFX制作の処理能力
レンダリングは、VFX制作のなかでも特に多くの計算処理を必要とする工程です。精緻な背景やシミュレーション、複雑なライティング、長尺のアニメーションを仕上げるには、高い処理能力が求められます。数百、数千フレームを納品する場合は、その負荷も大きくなります。
クラウドレンダリングを使えば、スタジオは自社の機材だけに頼らず、外部のコンピューターの処理能力を活用できます。分散処理に対応したレンダリング作業を複数のマシンに振り分け、アニメーションの各フレームを並行して処理することで、大規模なレンダリングにかかる時間を短縮できます。
VFX制作を支えるレンダーファーム

レンダーファームを利用すると、複数のマシンでレンダリングを行えるため、プロジェクトの規模や負荷に応じて処理能力を増やせます。特に、大量のレンダリング機材を自社で購入・維持するのが難しい小規模なスタジオにとって、有効な選択肢です。対応する3Dシーンを送信すれば、レンダリングを外部のマシンに任せ、その間も手元のパソコンでほかの制作作業を進められます。修正が重なる案件や、最終品質でのアニメーション出力が必要な場面でも、限られた納期に対応しやすくなります。
ただし、クラウドレンダリングを利用するには事前の準備が欠かせません。データを送信する前に、使用するソフトウェアやプラグインが対応しているか、外部ファイルに不足がないか、レンダリング設定に問題がないかを確認しておきましょう。データ転送に必要な条件も、あらかじめ確認しておく必要があります。
DIVO Productionは負荷の高いVFX制作にどう対応しているのか
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韓国のスタジオDIVO Productionは、柔軟に拡張できるレンダリング環境を活用し、現代のVFX制作を支えています。CMや映画、ミュージックビデオ、デジタルコンテンツなど幅広い分野を手がけ、CG制作にUnreal EngineやAIを活用した映像制作技術を組み合わせています。
LG UplusのデータセンターやLG CNSのプロモーション案件では、MayaとV-Rayを使い、複雑な3D映像を制作しました。手元の環境でレンダリングすると時間がかかり、特にクライアントからのフィードバックを受けて追加修正が必要になった際には、制作に大きな遅れが生じるおそれがありました。そこでGarageFarm.NETを活用することで、大量のレンダリング処理に対応しながら、制作スケジュールもより柔軟に調整できるようになりました。
「社内のリソースだけでは対応しきれないプロジェクトでは、レンダーファームが不可欠でした」— ユン・ヒグァン(DIVO Production CEO兼VFXスーパーバイザー)
このように、レンダリングにかかる時間を短縮すれば、その分、仕上がりの確認や修正に時間をかけられます。納品までに試行錯誤を重ねる余裕が生まれ、作品のクオリティ向上にもつながります。
VFXアーティストに求められるスキルの変化
AIやプロシージャルツール、リアルタイム技術の普及に伴い、VFXアーティストには、個々のツールを使いこなすだけでなく、制作工程全体のつながりを理解する力も、ますます求められるようになっています。
構図やライティング、アニメーション、色彩、映像で物語を伝える力といった、従来のスキルは今も欠かせません。そのうえで技術面の知識も身につけることで、作業を効率化し、新しい制作手法にも対応しやすくなります。特に、次のような分野の知識やスキルが、より重要になってきています。
- AIを活用した制作:自動化が役立つ作業と、人の手による調整が必要な作業を見極めること。
- プロシージャル技術:Houdiniなどを使い、設定や入力データの変更に応じて変化するエフェクトやアニメーションを制作するスキル。
- リアルタイムエンジン:操作や変更がその場で反映される環境を活用し、プリビズやバーチャルプロダクションを行うスキル。
- レンダリングの最適化:シーンの複雑さや必要なハードウェア性能、レンダリングにかかるコストを把握すること。
- 制作工程の連携:素材や制作データを管理し、異なるアプリケーション間でスムーズに受け渡しできるようにすること。
こうしたスキルは、少人数のチームで特に役立ちます。一人のアーティストが特定の作業だけでなく、複数の制作工程を担当することも多いためです。
現代のVFX制作における課題
新しい技術は制作の効率化に役立つ一方、導入にあたっては、実務上の課題も生じます。既存の制作工程に組み込む前に、そのツールが自分たちの現場で本当に役立つかを見極める必要があります。特に、次のような点が課題となります:
- 意図した表現の実現:AIや自動化ツールで生成したものを、細かく意図に沿って仕上げるには、大幅な調整が必要になることがあります。
- 互換性:使用するソフトウェアやプラグイン、ファイル形式によっては、異なるアプリケーション間でデータをスムーズに受け渡しできないことがあります。
- 制作コスト:ハードウェアの更新やクラウドサービスの利用、ソフトウェアのサブスクリプション契約によって、追加の費用が発生することがあります。
- 新しいツールの習得:アーティストが使い方を学び、これまでの制作工程に取り入れるには時間がかかります。
個々の作業が速くなっても、制作全体の時間短縮につながるとは限りません。作業スピードだけでなく、チーム内での連携のしやすさ、仕上がりの安定性、コストの管理まで含めて改善することが大切です。
これからのVFX制作
今後のVFX制作では、制作ソフトウェアと、それを支えるコンピューティング環境、自動化の仕組みが、さらに密接に連携していくと考えられます。すでに、いくつかの技術の進展がスタジオの制作方法へ影響を与えています。
AIとプロシージャル技術による自動化の広がり ー 今後は、使い慣れたVFX制作ソフトの中でAIを活用し、不要な映り込みの除去や素材の準備、合成作業の一部を進められるようになるでしょう。また、ルールや設定に沿って自動生成するプロシージャル技術も広がり、複雑な背景やシミュレーション、アニメーションの制作に活用されていくと考えられます。
リアルタイムレンダリングとオフラインレンダリングの連携 ー リアルタイムエンジンの性能が向上し、プリビズやバーチャルプロダクションで使ったモデルなどの素材を、最終レンダリングでも活用しやすくなっています。一方、緻密なライティングや複雑なエフェクト、厳密な画質調整には、引き続きオフラインレンダリングが必要です。今後は、ひとつの手法に頼るのではなく、ショットに応じて両者を使い分ける場面が増えるでしょう。
必要に応じて使えるコンピューティング環境 ー クラウドレンダリングやリモートワークステーションを使えば、機材を買い足さずに、必要なときだけ処理能力を追加できます。そのため、個人や小規模なスタジオでも、負荷の高い制作に取り組みやすくなります。特に、複雑なシーンや高解像度の映像、細部まで作り込んだ背景を扱う際に役立ちます。
VFX制作に関するよくある質問
- AIによってVFX制作はどう変わっていますか? ー AIは、ロトスコープや画像の領域分け、不要な映り込みの除去、画質の改善といった作業の自動化に役立っています。また、コンセプトの検討や初期段階のイメージ作りにも活用されています。ただし、プロの制作現場では、意図した表現に仕上げるために、アーティストによる判断や調整が今も欠かせません。
- AIはVFXアーティストに取って代わるのでしょうか? ー AIによって、作業の進め方や役割分担は変わるかもしれません。ただし、複雑なVFX制作では、表現の方向性を決める力や専門的な技術、複数のショットを通して一貫した仕上がりを保つ力が必要です。
- リアルタイムレンダリングとオフラインレンダリングはどう違いますか? ー リアルタイムレンダリングは、操作や変更をすぐに画面に反映できるため、仕上がりの確認やバーチャルプロダクションに適しています。一方、オフラインレンダリングは、時間をかけて複雑な計算を行えるため、細部まで作り込んだ最終映像の制作によく使われます。
- VFXスタジオはなぜレンダーファームを使うのですか? ー レンダーファームを使うと、複数のコンピューターで処理を分担し、並列処理が可能なフレームを同時にレンダリングできます。そのため、負荷の高いアニメーション制作でもレンダリング時間を短縮でき、納期に間に合わせやすくなります。
- 小規模なVFXスタジオにもクラウドレンダリングは役立ちますか? ー はい。機材を大量に購入しなくても、必要な処理能力を追加できます。ただし、導入にあたっては、レンダリングの要件やソフトウェアの互換性、プロジェクトの規模、費用を踏まえて、自分たちの制作に合うかを判断する必要があります。
まとめ

AIやリアルタイムレンダリング、クラウドの活用が日常の制作に広がり、制作工程の連携も進むなか、VFX制作は進化を続けています。こうした技術によって、アイデアを形にする方法が増え、負荷の高い案件への対応や、工程をまたぐ共同作業もしやすくなっています。これからのVFX制作では、従来の知識や経験に、柔軟に使えるツールや制作環境を組み合わせることが重要になるでしょう。それぞれの技術がどの作業に役立つかを見極めれば、新しい表現を試しながら、納品まで着実に進められる制作体制を整えられます。
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