ダニー・ローリングスが手がける「ELEMENTS ACADEMY」
私は、いつかピクサーで働くのが夢です。ピクサーの魅力は、3Dアニメーションの技術だけではありません。丁寧に作り込まれた物語には、共感したり、勇気をもらったり、思わず涙したりする瞬間があります。作品によっては、いろいろなことを考えさせられたり、新しい気づきを得られたりするところも好きです。
イングランドのケント出身のダニー・ローリングスは、最近ロチェスターにあるクリエイティブ・アーツ大学(UCA)で、コンピューター・アニメーション・アーツの学士号を取得しました。この課程では、2Dのデッサンの基礎から、3Dモデリング、リギング、アニメーション、キャラクターデザインまで、幅広く学びます。ダニーが卒業制作で取り組んだのは、科学と教育を組み合わせた「エレメンツ・アカデミー」です。この作品は11〜13歳の子どもたちに向けた、3Dアニメーションのウェブシリーズとして構想されています。
そんなダニーが特に好きなのは、キャラクターデザインやモーショングラフィックス、モデリングです。将来は映画やテレビの制作現場で、キャラクターや背景の3Dモデリングを手がけたいと考えています。なかでも憧れているのがピクサーで、いつか映画のエンドロールに自分の名前が載ることが夢だそうです。今回は、ダニーがCGの世界に足を踏み入れたきっかけや、創作に影響を与えたもの、関心のある分野、さらにスクービー・ドゥーやMayaでのレンダリングやレンダーファームについても伺いました。

お名前と、お住まいの地域を教えてください。
ダニー・ローリングスです。イングランドのグレーブズエンドに住んでいます。
大学では何を学んでいたのですか? コースの内容についても教えてください。
ロチェスターにあるクリエイティブ・アーツ大学(UCA)で、コンピューター・アニメーション・アーツを3年間学び、このほど優等学士号(BA Honours)を取得しました。
コースの詳しい内容は、UCAのウェブサイトで紹介されています。
趣味や、プライベートの時間の過ごし方を教えてください。
新しいことを学ぶのが好きなので、自由な時間には、気になったことを夢中になって調べています。特に科学からは、たくさんの刺激を受けています。今も制作を続けている「エレメンツ・アカデミー」はもちろん、ゲームの好みにも影響するなど、科学への関心は日々の暮らしのさまざまなところに表れています。
ゲームも好きで、パズルやホラー、RPGなど、さまざまなジャンルを楽しんでいます。なかでも一番好きなのは、SF・RPGの「マスエフェクト」シリーズです。何より楽しいのは、魅力的な物語に引き込まれることです。これは、昔から本を読むのが好きだったことにもつながっています。ウォーターストーンズやWHSmithのような書店に入ると、本を買わずに帰るのはなかなか難しいですね。まだ読んでいない本が3冊以上あっても、つい新しい本を買いたくなってしまいます。
CGに興味を持ったきっかけは何ですか? また、いつ頃から興味を持ち始めたのでしょうか?
私が生まれたのは、『ジュラシック・パーク』が公開されてから1年もたたない、『トイ・ストーリー』の公開1年前という時期でした。子どもの頃から2Dや3Dのアニメーションを観て育ち、自分でも気づかないうちから、CGへの興味が芽生えていたのだと思います。最初のきっかけはカートゥーン ネットワークで、まず夢中になったのが、再放送されていた『スクービー・ドゥー』です。今でも大好きな作品で、ビデオ向けに制作された映画もVHSでたくさん観ていました。その後は、『エド エッド エディ』や『デクスターズ ラボ』なども楽しむようになりました。
アニメーションを観るだけでなく、その作り方にも興味を持つようになったのは、2000年代に入ってからです。2001年には、ユーモアたっぷりの3Dアニメーション『シュレック』と、2Dと3Dを美しく組み合わせた『アトランティス/失われた帝国』が公開されました。この2作品のDVD特典映像をじっくり観たことが、3Dアニメーションの制作に興味を持つ大きなきっかけになりました。そして2002年には、大好きな『スクービー・ドゥー』が初めて実写映画化されました。愛嬌たっぷりのしゃべる犬、スクービー・ドゥーは、この映画ではCGで描かれていました。
実写とCGを組み合わせた映像で、初めて強く印象に残ったのが、この『スクービー・ドゥー』でした。現実にはいない犬を、まるで本当にそこにいるかのように見せる技術に夢中になったんです。CGの道を目指すうえで、大きなきっかけとなった作品です。そして決め手になったのが、2005年に公開された、CGをふんだんに使った実写リメイク版『宇宙戦争』でした。公開から10年たった今でも、私にとって一番好きな映画です。その頃の私は大の読書好きで、絵を描くことも好きでしたし、ときどき物語を書くこともありました。本を読むと、その世界にすっかり入り込み、登場人物に深く感情移入していました。
CGの道を選んだ理由は何ですか? また、どんなところに面白さや魅力を感じていますか?
自分の想像した世界を形にできることが、CGを選んだ理由です。そしていつか、自分の作品を通じて、誰かに刺激を与えたり、楽しんでもらったり、わくわくしてもらったりできればと思っています。長編映画の制作に携わることはもちろん、短編アニメーションやテレビシリーズを作ったり、魅力的で共感できるキャラクターを生み出すことが夢です。特に面白いと感じるのは、ポリゴンを使った3Dモデリングです。この5年間で、あまり意識せずに手を動かせるほど身についてきました。それでも、まだまだ工夫や挑戦の余地があるので、今も新鮮な気持ちで取り組めています。
キャラクターデザインが大好きです。ただ、ペンタブレットよりも鉛筆と紙で描くほうが得意で、最近はベクターツールや図形を使って描くことも増えました。カレッジ時代には、ロゴやグラフィックのデザインにも興味を持つようになりました。インフォグラフィックスや、文字に動きをつけるキネティック・タイポグラフィなど、モーショングラフィックスにも興味があります。大学2年の課題では、インフォグラフィックスにじっくり取り組む機会がありました。テーマは、なんとくじ引きで決まった「ちょっと変わった科学の豆知識ベスト10」。この課題をきっかけに、インフォグラフィックスがますます好きになりました。


現在制作中の3Dアニメーション『エレメンツ・アカデミー』では、学習内容をわかりやすく伝える短いインフォグラフィックスをいくつか取り入れています。作品の中でも大切な役割を担うパートです。6月末までに完成させ、7月初旬に開催される今年の「New Designers」展で公開する予定です。会場では、同じく2016年にCAAを卒業する仲間たちの作品と一緒に展示されます。
これまでで一番大変だった、あるいは楽しかったプロジェクトは何ですか? また、その理由を教えてください。
一番大変だったのは、大学2年の「ストーリーテリング」の課題です。アダム・ストーン、スキー・ガイと私の3人で、不器用なフランス人シェフがデートの相手にいいところを見せようと奮闘するアニメーションを作りました。私は2人のキャラクターデザインと、シェフの全身、デート相手の女性の頭部のモデリングを担当しました。アニメーションも一部担当しましたが、当時はまだ経験が浅く、キャラクターに動きをつける作業が一番難しかったです。
一番楽しかったのは、元素をキャラクターにする制作です。科学、キャラクターデザイン、グラフィックデザイン、モーショングラフィックス、3Dモデリングなど、自分の好きなことや得意なことを組み合わせられるのが魅力です。そのおかげで、1年以上取り組んでいても飽きることなく、楽しみながら制作を続けられています。大学を卒業してからも、このアイデアをもとに作品を作っていけたらと思っています。

昨年、マテルで映像や商品のデザインを手がけるトム・マクダウェルの特別講義を受け、大きな刺激をもらいました。その話は、キャラクターの作り方や見た目にも大きく影響しています。特に印象に残ったのは、リニューアル版『ボブとはたらくブーブーズ』の制作にまつわる話です。それをきっかけに、『エレメンツ・アカデミー』も、キャラクターをおもちゃやグッズとして展開できるようにデザインしようと考えました。完成したキャラクターの色数を絞り、ビニール製のフィギュアのような見た目にしたのも、商品化を意識したからです。
仕事で実現したい目標は何ですか? また、5年後にはどんな仕事をしていたいですか?
5年後には、映画やテレビ向けのキャラクターや背景を3Dで作る仕事に就き、安定して働けていたらと思います。そして、映画やアニメのエンドロールに自分の名前が載ることが、昔からの夢です。
昔から、ピクサーで働きたいと思っていました。物語もキャラクターも丁寧に練られていて、自然と共感できるところに惹かれるからです。ピクサーのキャラクターは魅力的で、一人ひとりの個性もしっかり描かれています。見た目はリアルでありながら、アニメらしいデフォルメも効いている。その絶妙なバランスのおかげで、現実を離れて物語の世界に入り込めるのに、どこか親しみも感じられるんです。
ピクサーのすごいところは、楽しいだけでなく、思わず涙してしまうような切ない場面もきちんと表現していることです。人生は、いつも順風満帆というわけではありませんからね。長編でも短編でも、つらさや悲しみから目をそらさず、その中に少しずつ希望を見せてくれます。登場人物と一緒に、観ている私たちも「きっと大丈夫」と思えるようになるんです。それでも、現実と同じように、ときには誰かとの永遠の別れもあります。
悲しみや恐怖、そして死は、人の心を大きく揺さぶります。登場人物が苦しみを乗り越え、再び希望を見いだす姿は、観る人の人生を変えることも、時には命を救うことさえあると思います。アニメを観る理由も、現実から少し離れたくなる理由も、人それぞれです。大好きなキャラクターが、自分と同じようにつらい経験をしながらも、それを乗り越えていく。その姿を見て、「自分もきっと乗り越えられる」と希望を持ち、もう少し頑張ってみようと思える人もいるのではないでしょうか。
だからこそ、私はピクサー(正確にはディズニー/ピクサー)で働きたいんです。彼らは普通の3Dアニメーションスタジオではなく、丁寧に練られた物語で、観る人の共感を呼び、勇気を与え、時には涙を誘う。さらに、考えるきっかけや新しい学びをくれることもあります。そんな作品づくりに、自分も関わりたいと思っています。
今回の制作で、レンダーファームを使った理由を教えてください。
レンダリングに何日もかけるより、その時間を作品づくりに使いたかったからです。そこで、GarageFarm.NETのクラウドレンダーファームにレンダリングを任せることにしました。
GarageFarm.NETを知ったきっかけを教えてください。
私も含め、CAAの3年生の多くが、卒業制作の早い段階からクラウドレンダーファームを使おうと考えていました。そこで、コース責任者のフィル・ゴム先生が、私たちを代表してGarageFarm.NETに問い合わせてくれたのです。その際、制作支援として、無料で使えるレンダリングクレジットを50クレジット分提供していただきました。利用した学生はみんな、とても助かったと感謝しています。
GarageFarm.NETでレンダリングした作品について教えてください。また、このテーマを選んだ理由は何ですか?
これまでにGarageFarm.NETでレンダリングしたのは、キャラクターをぐるりと一周見せる映像と、本編のアニメーションの一部です。どちらも、制作中の『エレメンツ・アカデミー』で使うものです。『エレメンツ・アカデミー』は、元素をキャラクターにして、その学校生活を描く3Dアニメーションです。11〜13歳の子どもたちが楽しく学べるWebアニメシリーズとして企画しました。現在は、第1話「Wat(er)’s Your Problem?」を制作しています。このエピソードのレンダリングも、大部分をGarageFarm.NETにお願いする予定です。このテーマを選んだ一番の理由は、科学とキャラクターデザインが好きだからです。自分の好きな二つの分野を、一つの作品にできると思いました。
今回の制作で、一番大変だったことは何ですか?
一番大変だったのは、時間の使い方です。細かいところにこだわりすぎて、つい時間をかけてしまうこともありました。
制作に使ったソフトや技術について教えてください。また、参考にした資料や、学習に役立ったものはありますか?
キャラクターデザインには、すべてAdobe Photoshop CCのベクターツールを使いました。まずは参考画像をまとめ、シルエットでキャラクターの形を考えます。その後、3Dモデルを作る際の下絵となる、正面や側面から見た図までPhotoshopで仕上げました。ベクター制作に特化したIllustratorではなくPhotoshopを選んだのは、レイヤーの仕組みが自分には使いやすいからです。3Dモデルの制作や表面の質感づくり、アニメーションにはAutodesk Maya 2016を使い、レンダリングはすべてMental Rayで行いました。
音声の編集にはAdobe Auditionを使っています。映像の編集や合成には、作業内容に応じてAfter EffectsとPremiere Proを使い分けています。大学2・3年次にMayaを教えてくれるアラン先生は、アニメーション制作の各工程を解説したチュートリアルを、ご自身のサイトで公開してくれています。Mayaは多機能なぶん操作も複雑ですが、授業でも先生から使い方を直接学んでいます。
制作中に、何か面白いエピソードはありましたか?
2015年2月末、ヘリウムのキャラクターデザインを考え始めた頃のことです。ヘリウムといえば風船なので、自然と風船をイメージしたデザインになっていきました。ところが、最初に描いたシルエットを見てみると、偶然、ディズニー映画『ベイマックス』に登場する、空気で膨らむロボットのベイマックスにそっくりだったんです。
『ベイマックス』が公開されたのは、ヘリウムの最初のシルエット案をブログに載せた、わずか3日後でした。当時は映画のことを何も知らず、予告や宣伝も見ていなかったので、似ているなんて思いもしませんでした。スコットに指摘されて初めて気づいたのですが、それ以来、クラスの仲間たちとの間で、たびたび笑いのネタになりました。
ほかのレンダーファームサービスや、自分で構築したレンダーファームを使ったことはありますか?
いいえ。レンダーファームを使ったのは、GarageFarm.NETが初めてです。
GarageFarm.NETを初めて利用したときの印象を教えてください。
最初はどんなサービスなのかよくわかりませんでしたが、スタッフの皆さんがとても丁寧で、わからないことにも根気よく対応してくれたので、安心しました。使い勝手がよく、サポートも頼りになるので、これからも利用するつもりです。
これからアニメーションやCGを始める人に、アドバイスをお願いします。
まずは、制作のスケジュールを立てましょう。アイデアを書き出すためのホワイトボードを用意したり、手帳に毎日やることを書いたりすると、作業を進めやすくなります。付箋も便利ですよ。思いついたことをさっとメモするにも、大事な情報を書き留めておくにも役立ちます。
ブログを持っていなければ、ぜひ作ってみてください。作品や制作過程を載せておけば、業界のプロにも見てもらいやすくなります。万が一データを失っても、それまでの取り組みや成長の記録が残ります。
それから、バックアップだけは絶対に忘れないでください。保存先は一つではなく、必ず複数用意しましょう。作業中もこまめに保存し、別名のファイルを残しておくことが大切です。そうすれば、バックアップを取る前にファイルが壊れても、何時間分、何日分もの作業を丸ごと失わずに済みます。この業界では、求められることもたくさんあります。それでも、何もないところからすばらしい作品を生み出せたときの達成感は、苦労した分だけ大きいものです。
ブログやSNSのアカウントを教えてください。
ブログは dannyrollings.blogspot.co.uk、Twitterのアカウントは @DRollingsCAA です。
最後に、伝えておきたいことはありますか?
この業界では、時間の管理がとても大切です。制作には多くの工程があるので、それぞれの締め切りを守り、次の作業へ進めていく必要があります。一つの作業に時間をかけすぎると、その後の工程にしわ寄せがきてしまいます。完成までたどり着けなかったり、最後に慌てて仕上げることになって、本来の力を発揮できなかったりするんです。最後に、アニメーションを学んでいる人にも、すでに仕事にしている人にも、フィル先生の言葉を贈ります。「最高の自分を目指そう!」





