3DアーティストやCG業界を目指す人の多くは、まず3Dモデリングから学び始めます。それをきっかけにプロとしての道を歩む人もいれば、自分の感性やアイデアを表現するために取り組む人もいます。目指す方向は違っても、モデリングの基礎を身につけることは大切です。作りたいものが増え、表現の幅が広がるにつれて、基礎の大切さを実感する場面も出てくるでしょう。
私たちGarageFarm.NETは、プロ向けの大手3Dモデルマーケットプレイス「CGTrader」と協力し、優れたアーティストの経験や制作のノウハウを3Dコミュニティに届けています。
今回は、車や機械などのハードサーフェイスの3DCG作品を手がけるアレックス・ノヴィツキーにインタビューしました。これまでの歩みや、モデリングで大切にしていること、上達を目指し続ける原動力について聞きました。
何度も失敗して、本当に悔しい思いをしました。でも、自分がほかの人より劣っているわけではないと思い直し、毎日できる限りのことに取り組むようになりました。すると、制作そのものを楽しめるようになったんです。失敗を通して、次に何を学べばいいのかも見えてきました。アレックス・ノヴィツキー
それでは、アレックス・ノヴィツキーのインタビューをお届けします。
3Dモデリングを始めたのはいつですか? また、何がきっかけでしたか?
ネットで素晴らしい作品をたくさん見たのがきっかけです。いや、もっと前でしたね。最初に夢中になったのは3ds Maxでした。インターフェースに惚れ込んだんです。思うように動かず手を焼くこともありましたが、使うのは楽しかったですね。そのうち、ネットでいろいろなCG作品を見るようになりました。今振り返ると、必ずしも完成度の高い作品ばかりではありませんでしたが、当時はとても魅力的に感じました。特に引かれたのが車です。ボディやクロームの輝きに見とれて、「自分もこんな画像を作りたい」と思いました。それから何年も、車のCGに夢中になっていました。自分がそうした作品に見入ったように、誰かが思わず見入ってしまうような車のCGを作りたかったんです。でも肝心の、レンダリングできるような3Dモデルがありませんでした。そこで、自分でモデリングする必要があったんです。
そこで、自分でも同じような車のCGを作ろうと決めました。意気込んでモデリングに取りかかり、レンダリングまで仕上げようとしたのですが、うまくいきませんでした。「もう一度挑戦すれば、きっとうまくいく」と気を取り直してやり直しましたが、結果は同じでした。その後も挑戦を重ねたものの、思うような仕上がりにはなりませんでした。

納得のいく作品を作ろうと挑戦しては失敗する日々が、1年以上続きました。思うようにいかず、もどかしさを感じていました。それでも最後には、「自分が作りたいのだから、とにかく続けるしかない」とただ思っていました。
最初から立派な作品を作ろうと気負うのはやめました。今はただ学び続け、いつか自分にも傑作を生み出せると信じることが大切なのだと、受け入れたのです。そして、自分にこう言い聞かせました。「ダウンロードしたモデルではなく、自分で作ったモデルを使いたい。だから、自分の手で作ろう」と。
モデリングの技術を身につけなければ、そこから先へは進めませんでした。
「納得のいくモデルを作れないのなら、まずは勉強しよう」。そう考え、さまざまなチュートリアルを読み、一つ取り組むごとに小さな達成感を得ることを目指しました。ようやく最初の一歩を踏み出せたのは、自分にはまだ技術が身についていないと認め、高望みをいったん手放してからでした。それを受け入れるのは、本当につらいことでした。
チュートリアルで学びながら、フリーランスとして仕事をする日々を数年続けた後、モスクワにある「Realtime School」に通いました。そこで大いに刺激を受け、今度は自分自身のために作品を作るようになりました。創作意欲が湧き上がり、じっとしていられないほどでした。やがて、私の作品は雑誌に掲載されるようになり、さまざまなウェブサイトで賞をいただくようにもなりました。


今では、私の作品が掲載された雑誌や書籍が、手元に数多くあります。「かっこいい一枚を作りたい」というささやかな夢が、いつしか私の生き方そのものになりました。
2013年には、モデリングの技術を教えてほしいと、複数のオンラインスクールから声をかけていただきました。そして同年、CGTarianでモデリングの講師を務めることになりました。
どのようなものやテーマを中心にモデリングしていますか?
主に、車や機械などの硬い物体を扱う「ハードサーフェス」のモデリングですね。特に、クラシックカーやSFをテーマにした作品を作るのが好きです。これまでにも、車や古い大砲などを再現したモデルを数多く制作してきました。精密なエンジンをはじめ、複雑な構造を持つものにも惹かれます。

ご自身の作品の中で、最も誇りに思っているもの、あるいは特別な思い入れのあるものは何ですか? また、その理由を教えてください。

この作品だと思います。
Making of «Another Sky» | CGTrader.com
理由は二つあります。
一つは、航空機や第一次世界大戦の空中戦というテーマが好きだからです。以前から、この時代を舞台にしたモデルを作りたいと思っていました。もう一つは、チュートリアルを作るのが好きだからです。完成した画像だけでなく、制作過程の中でも特に興味深い部分を、詳しい解説とともに伝えるのが好きなんです。
モデリングには、どのようなソフトウェアを使っていますか?
私にとって、どのソフトウェアを使うかは、それほど重要ではありません。ソフトウェアは、あくまで作品を作るための道具だと考えています。普段はMayaと3ds Maxを使っていて、どちらも気に入っています。特定の作業では、ZBrushを使うこともあります。
モデリングに役立つ情報は、どこで探していますか?
やはり、まずはYouTubeですね。次によく利用するのはPolycountです。フォーラムを読む中で、制作の進め方を改善する方法を数多く見つけました。役に立つサイトはほかにもたくさんあります。必要な情報を探していれば、どこかで見つかるものです。作品づくりのインスピレーションを得たいときは、ArtStationを訪れてみるとよいと思います。
次は、どのようなことに取り組む予定ですか?
今は、これまでで最も大きなプロジェクト「Untitled One Academy」に取り組んでいます。3DCGを学び始めたい方なら、誰でも参加できるオンラインスクールになる予定です。これまでに培ってきた知識と経験のすべてを、新しい講座「Mayaで学ぶ3Dハードサーフェスモデリング」に生かしていきたいと考えています。
まだ準備中ですが、お待ちいただく価値のある内容になると思います。開校当初はロシア語のみでの提供となりますが、後に英語にも対応する予定です。
今後の目標は何ですか? 特に実現したいプロジェクトはありますか?
実は今、まさに夢に描いていたプロジェクトに取り組んでいます。3DCGを学びたい、あるいはこの分野に関わりたいと思うすべての人にとって、費用の面でも、もっと気軽に学べる環境を作れると信じています。
CG業界はこれから、どのように変わっていくと思いますか?
面白い質問ですね。ありがとうございます。今は、技術が飛躍的に進歩する時代です。私は、いわゆる「シンギュラリティ」の時代を迎えていると考えています。Kickstarterのようなサービスのおかげで、夢やアイデアを形にする機会も広がっています。CG業界や制作に使うソフトウェアも、近いうちに大きく変わるでしょう。面倒で単調な作業から解放され、作品の表現やアイデアなど、本当に力を注ぎたい部分に専念できるようになる。そんな未来が来ると思っています。
確かに、多くの人が仕事を失うことになるでしょう。それでも、より生産性が高く、創造性を発揮できる社会を実現するためには、避けられない代償であり、それを上回る価値があると私は考えています。私は、ニューラルネットワークやAIの可能性を強く信じています。ロボットに自分の仕事を奪われることも、恐れてはいません。
学び続け、技術を磨き続けているあなたの原動力は何ですか? また、これからこの分野を目指す人たちに、何かアドバイスはありますか?
最初の原動力は、ほかの人への羨ましさでした(笑)。あまり人に勧められるものではありませんね。素晴らしい作品を見ると、自分も同じくらいのものを作りたいと思って挑戦していました。でも、何度も失敗し、そのたびに本当に悔しい思いをしてきました。でもやがて、自分がほかの人より劣っているわけではないと思えるようになり、毎日、自分にできることをしようと考えるようになりました。すると、作る過程そのものを楽しめるようになったんです。失敗も、次に何を学べばよいのかを教えてくれるものになりました。
次は、レンダリングについて伺います。
モデルやシーンを作るとき、レンダリングで思いどおりの仕上がりにするために、普段から気をつけていることはありますか?
まず何よりも、形を大切にしています。
形状が整っていて、細部まで正確に作られたモデルが好きなんです。レンダリングでは、作品のスタイルや表現したいアイデアを大切にしながら、そのモデルから自分が受ける印象を意識しています。また、メッシュは常に、整った無理のない構造になるよう心がけています。そうすることで、レンダリングの作業が進めやすくなり、仕上がりもより正確になります。

魅力的なレンダリングに仕上げるには、モデルの出来がよいだけでは十分ではありません。光の当て方や質感の表現も大切です。
光の当て方や質感も、制作を始める前に考えておくのですか?
もちろんです。まずは、完成した作品を頭の中で思い描くようにしています。どんなものにも、そのものならではの個性や雰囲気があります。これから作るシーンで何を感じ、何を表現したいのかを大切にしながら、どのような仕上がりにしたいかを想像するんです。想像力は、作品づくりを支えてくれる、とても頼もしい道具だと思います。
始めたばかりの頃を振り返って、今ならすぐに気づけるような失敗はありますか?
一番苦労したのは、ライティングです。レンダリングでは、光の当て方が何よりも重要だと考えています。当時は、その仕組みを理解しないまま、さまざまなチュートリアルの手順をまねしていました。説明どおりに進めているつもりでも、仕上がりは毎回、お手本とはかけ離れていたんです。その後、ライティングに関するチュートリアルで学び直し、ようやく改善できました。ウェブ上でも、光の働きや照明の仕組みを解説した記事を数多く読みました。
私にとって、ライティングの一番の教材は映画です。映画を観ているだけでも、モデルにどう光を当てればよいか、多くのヒントが得られます。ただ、まずは基礎を身につけることが大切です。映画から学ぶときも、どこに注目すればよいのかを理解しておく必要があります。

レンダリングや、その処理にかかる時間は、制作の進め方にどのような影響を与えていますか?
私は、すべてを一度にまとめてレンダリングするタイプではありません。一方で、画像は高解像度で出力するのが好きです。解像度を上げると、細かなミスまで見つけられるからです。10Kの解像度でもきれいに仕上がっていると、うれしくなります。少し変わっているかもしれませんが、高解像度の画像を拡大したときや、クローズアップでしか見えないような、ごく小さなディテールを作り込むのが好きなんです。
満足のいく仕上がりにするには、レンダリングにも時間がかかります。その待ち時間は、公園やキーウの旧市街を散歩して過ごすのが好きです。気分転換になりますし、パソコンから離れて休むこともできます。iPadやスマートフォンは家に置いて、外に出る。それだけでいいんです。あちこち歩いて、いろいろな場所を訪ねています。
レンダリング時間を短くするための工夫や、普段実践している方法を教えていただけますか?
ポイントは、レンダリング後の画像調整をうまく活用することです。たとえば、光沢やハイライトを後から加えられるなら、そうすればよいんです。シーンの一部の仕上がりが気に入らない場合も、背景とモデルを分けてレンダリングし直す方法があります。やり方に決まりはありません。柔軟に考えて、いろいろ工夫してみてください。
普段は、オブジェクトごとに分けてレンダリングするようにしています。そのほうが、修正が必要になったときも時間を節約できるからです。レンダリング後の画像調整で仕上がりをよくできるなら、ためらわずに活用しましょう。
レンダーファームを使ったことはありますか? また、ネットワーク経由や外部のレンダーファームでレンダリングする場合、シーンを制作する際に気をつけることはありますか?
一度だけあります。負荷の高いシーンを扱っていたのですが、当時のパソコンでは性能が足りませんでした。もちろん、締め切りも迫っていました(笑)。使ったサービスの名前はもう覚えていませんが、無事に締め切りに間に合ったことは覚えています。
記事の感想や、今後取り上げてほしいテーマがありましたら、ぜひお寄せください。皆さまの声を楽しみにしています。



